霊長類研究 Supplement
第32回日本霊長類学会大会
セッションID: A11
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口頭発表
カキの実の分布がニホンザルの行動圏利用に与える影響
大井 徹前橋 亮太
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抄録

ニホンザルによる農作物被害が深刻化する原因の一つとして、集落周辺に存在する食物資源への依存が進むことが挙げられている。集落周辺には農作物以外にカキ、クリ、クワなど集中して分布する高栄養の食物があり、群れはそれらに強く誘引され、集落周辺への定着化が促進されると考えられるからである。このことを検証するため、私たちは、石川県白山麓に生息するクロダニA群を調査対象とし集落周辺に存在するカキの実やその他の食物資源が群れの行動圏利用に与える影響を定量的に明らかにしようと考えた。11月、12月の上、中旬に、群れの行動圏内で結実しているカキの位置と果実数を記録した。また、30分毎に群れの位置と個体の食性を記録した。解析の単位として、GIS(Arc Map10.1)上で行動圏の林縁(約14.2km)を15等分、山側と集落側に100mのバッファを発生させ、15個のセクションを作成した。そして、11月と12月それぞれ、セクション単位で群れによる利用頻度とカキの実の個数、植生との関係を検討した。11月から12月にかけてカキの実の個数は11,504個から1,981個へと急速に減少した。セクション毎のカキの実の量とサルの利用頻度には、11月では正の相関関係があった。一方、カキの実が少なかった12月には相関関係は認められなかった。また、11月において利用頻度と広葉樹林の面積割合にも正の相関関係があった。11月においてカキの実が少ないのにも関わらず利用頻度が高かったセクションでは、群れは収穫後の水田で落穂や二番穂、草本類をよく採食していた。また、12月にはカボチャ、ダイコンなどの廃棄農作物や水田の雑草をよく採食していた。この地域において、群れの集落周辺への依存を減らすためには、収穫しないカキの伐採、カキの実の早期摘果、廃棄農作物の処理を適切に行うとともに、水田においては収穫後には耕起し、落穂と雑草を土にすきこむことが有効である可能性がある。

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