主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 34
開催地: 東京都
開催日: 2018/07/13 - 2018/07/15
動物園では,動物福祉の観点から生活環境,特に採食物を改善する「採食エンリッチメント」が推奨されており,希少動物の維持と増殖への貢献が期待されている。野生下の採食品目には,難消化性成分や反栄養成分が含まれていることが多く,馴致中に消化不良や中毒による下痢を誘発する危険が考えられるが,希少種の保護・増殖事業のなかで,野生復帰個体の創出を考えた場合,適切な採食エンリッチメントの導入は急務であると考えられる。野生下と異なった採食品目を給与されている飼育個体では,採食物の消化吸収に関わる腸内細菌構成が野生個体と大きく異なっており,野生個体は難消化性成分や反栄養成分を分解することのできる腸内細菌を有していると推測される。本研究の対象種であるレッサースローロリス(Nycticebus pygmaeus)は,野生下では植物ガム(樹液)を採食することが知られているが,多くの動物園では飼育個体の採食品目として給与されてこなかった。そこで採食エンリッチメントの一環として飼育個体に植物ガムを給与し,腸内細菌叢構成に与える影響を古典的培養法により調査した。排泄直後の糞便を,嫌気条件の希釈液に採取し,EG培地に塗沫後,37℃・嫌気条件下で72時間培養を行った。得られた分離株の16S rRNA遺伝子を用いた系統解析により,細菌種を同定した。1000種を超える腸内細菌の中でもっとも研究が進んでおり,宿主特異的な種が存在する乳酸菌種(LactobacillusおよびBifidobacterium)に関しては,Bifidobacteriumのみが分離されたが,いずれも既存の種とは異なる新種である可能性が示唆された。本菌種はロリス特徴的な菌種であり,種特有の採食品目の消化に重要な生理性状を持つと考えられる。