霊長類研究 Supplement
第34回日本霊長類学会大会
セッションID: P20
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ポスター発表
野生ニシローランドゴリラのオスにおけるストレスレベルの評価—ストレスは出自群からの移出を誘発するか—
*藤田 志歩ンゼ・ンコグ シメーヌ井上 英治竹ノ下 祐二坪川 桂子
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抄録

ゴリラの社会構造は属内変異が知られており,群れ内のオトナオスの数は地域によって異なる。ニシローランドゴリラでは複雄群はほとんど観察されておらず,オスは性成熟に達すると出自群から移出する。本研究は,オスの出自群からの移出における至近要因を検討するため,成長に伴うストレスレベルの変化を調べた。ガボン共和国ムカラバ―ドゥドゥ国立公園において,2011年10月から2017年2月まで断続的に調査を行い,人付けされたニシローランドゴリラ1群と,同じ遊動域内で観察された単独オスから新鮮便を収集して,コルチゾル濃度を測定した。併せて,糞便試料はDNA解析により個体識別を行った。解析の結果,出自オス9個体,核オス1個体および単独オス2個体,また対照として,出自メス3個体およびオトナメス5個体のコルチゾル動態が得られた。オスのコルチゾル濃度は年齢区分および社会的属性(コドモ:4~7歳,ワカモノ:8~11歳,サブアダルト:12~14歳,核オスおよび単独オス)によって有意に異なり,とくにサブアダルト期で高い傾向がみとめられた。出自メスにおいても,サブアダルト期(12~14歳)にコルチゾル濃度の上昇はみとめられたものの,オスほど顕著ではなかった。対象群ではこれまでに出自オス3個体および出自メス2個体の移出が観察されており,その平均年齢はメス(9.0歳)よりオス(13.7歳)の方が高かった。以上より,オスは性成熟に伴い出自群での雄間競合は強まるものの,集団間関係および集団外のオスとの関係において移出はむしろ抑制されており,これがストレスの上昇につながると考えられた。また,対象群では2016年10月に核オスが消失し,その後も群れ個体の追跡が続けられている。発表では,2018年2~3月に得たあらたなデータも追加して,これらの個体のストレスレベルの変化についても報告する予定である。

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© 2018 日本霊長類学会
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