主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 34
開催地: 東京都
開催日: 2018/07/13 - 2018/07/15
群れを形成する霊長類では,他個体のアカンボウに母親以外の個体(ハンドラー)が接触するinfant handling(IH)が頻繁に観察される。IHはハンドラーと母子双方が関わる行動であるが,母子の性質がIHに及ぼす影響はこれまであまり注目されてこなかった。そこで本研究では,ニホンザル野生群において,母子間関係とIHを受けた頻度の関係性を分析した。まず,2014年から2016年の間に収集した母子間交渉のデータを用いて主成分分析を行い,アカンボウの活動性,母親の拒否性,母親の非保護性という3つの主成分を得た。次に,これらの主成分得点とそのアカンボウがIHを受けた頻度を分析した。その結果,非保護性の主成分得点が大きいほど,非血縁かつ上位個体からよくIHを受けていた。アカンボウに近づく個体に対する母親の寛容性は,血縁個体よりも非血縁個体,下位個体よりも上位個体に対して低くなると考えられる。母親の保護性は,寛容性の低い個体がハンドラーの際に強く影響していたと考えられた。また,母親の寛容性が低いハンドラーは,より非保護性の高い母親のアカンボウほどIHが容易であったと考えられた。本研究により,IHでは母親の子育て行動の性質も考慮する必要性が示された。