主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 34
開催地: 東京都
開催日: 2018/07/13 - 2018/07/15
コモンマーモセットは,ヒトと同様に共同繁殖をする種であり,母親だけでなく,父親や兄姉個体も子育てに参加することから,霊長類の養育行動の神経メカニズムを調べるよいモデルとなる。本発表では,家族で飼育されているマーモセットのホームケージ内での観察,および乳児回収テスト,食物分配テストという実験場面での行動といった複数の指標による養育行動のデータを示す。【ホームケージ内での背負い行動】子が背負われている確率は生後35日頃までは50%以上あり,その後急速に減衰した。これは背負う個体の頭数によって変わらず,背負い行動が家族内で柔軟に分担されていることが示唆された。子を背負っている個体は,移動,食物摂取,遊び行動が減少したことから,背負い行動は個体にとってコストであるといえる。一方,子を背負っている個体は他個体からグルーミングを受ける確率が高くなる傾向がみられ,グルーミングが背負い行動に対する報酬となっていることが示唆された。【乳児回収テスト】養育個体が子を回収するまでの潜時は,分離による子の発声に対する感受性や,子を回収するために必要なスキルを表し,回収後に子を拒絶せずに背負い続けることは,子(背負い)に対する寛容性を表すと考えられる。養育経験は生後早期の回収潜時を減少させたが,子に対する寛容性には影響を与えなかった。【食物分配実験】養育個体が獲得した餌を子が取ることへの寛容さを計測するもので,家族ごとに大きな差がみられたが,背負い行動と食物分配行動の間には弱い相関関係が示唆された。【子育て行動と性行動の関係】マーモセットは出産後1週間で排卵し,連続妊娠することがあるが,連続妊娠で出産した場合,その前の出産後1週間時点の父親の背負い行動が減少していた。父親の子育て行動と性行動の間には,トレードオフがあることが示唆された。このように養育行動の様々な側面を測定することで,養育行動の発現メカニズムの詳細を明らかにできると考えられる。