霊長類研究 Supplement
第34回日本霊長類学会大会
セッションID: P27
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ポスター発表
その「しっぽ」はバランサーになってますか?-尾椎形態比較からみたマカクの尾の機能-
*若森 参濱田 穣
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抄録

オナガザル科マカク属は系統的に4つの種群に分類され,バーバリーマカクを除く3種群はアジアに分布している。マカク属では,同属内に短尾(相対尾長:頭胴長に対する尾長,2%)から長尾(124%)まで著しい変異があり,種群内にも変異が見られる。相対尾長が同程度(35~45%)のアカゲザル(M. mulatta),アッサムモンキー(M. assamensis),ブタオザル(M. nemestrina)は,中間的な尾長を持つ種であり,発表者はその尾の機能に注目してきた。この3種は,それぞれカニクイザル種群,トクマカク種群,シシオザル種群と異なる種群に属す。尾の動きとバランサー機能の検討のため骨格標本を用いて,筋付着部位となる横突起間幅,尾の動きと関連する椎体の形(高幅比),椎体角の計測を行い,椎体の長・高・幅から近似的に体積を求め,それを重量推定値として,重心を求めた。重心位置を尾長で標準化し,カニクイザル種群(4種)とブタオザル,アッサムモンキーの間で比較した。その結果,横突起間幅は,アッサムモンキーで最も大きく,次いでアカゲザル,ブタオザルが最小だった。椎体の高幅比はアッサムモンキーが最も高く,逆にブタオザルでは最低だった。仙骨と近位尾椎の椎体角の累積角度はプラス(上すぼまり)であり,それを累積するとアカゲザルとブタオザルは同程度に増加するが,アッサムモンキーでは角度が小さかった。特にブタオザルでは,仙骨から第3尾椎までで尾が最も大きく背側に反っていた。重心位置は,ブタオザルでは尾の根元から32%のところで他種より優位に近位にあり,短尾のニホンザルは36%で,その他中長尾種は約38%であった。このことからアカゲザルとアッサムモンキーは,バランサーとして使用していると考えられる。一方,ブタオザルでは尾にバランサーとしての機能はなく,尾椎が短く多いことから,尾の近位でより強く背伸させて保持することに適していると考えられる。

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