主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 34
開催地: 東京都
開催日: 2018/07/13 - 2018/07/15
高崎山群の採餌行動に注目して撒き餌を拾う行動を観察すると,子ザルと大人ザルでは撒き餌であるコムギの拾い方が異なることがわかった。65年前から餌付けされている高崎山のニホンザルは,餌付けの影響によって野生のサルには見られない「石遊び」や「人慣れ」などの行動を行うことから,餌付けが前肢の行動発達に及ぼしている影響をサルの複数の行動における利き手に関する調査を行うことで研究することにした。高崎山に生息するB群とC群を対象に,高崎山自然動物園のサル寄せ場において,コムギやサツマイモなどの撒き餌を拾う採餌行動,グルーミング行動,石遊び行動を調査し,利き手の傾向を示す側性係数を用いて,各行動における利き手の有無を分析するとともに,それぞれの行動が行われた状況を詳細に調査することで,約300頭の前肢の使い方を分析した。調査の結果,採餌行動においては,コムギ拾いには両手を同様に素早く動かして使っていたが,イモ拾いの場合では,落ちているイモを拾う場合は利き手が見られ,リヤカーから落ちてくるイモを採る場合には両手を同様に使っていた。また,グルーミング行動においても,サルは左右の手を同様に使っており,グルーミングをする相手の毛並みに対応した効率的な動作をしていた。さらに,大人ザルはイモを食べながら行う「石遊び行動」に利き手と反対の手を使っていることがわかった。これらのことから,高崎山群のニホンザルでは,イモを拾うような単純な行動には本来の優先する手を使うため利き手が見られるが,グルーミングやコムギ拾いなどの両手の指先を複雑に使う行動では,利き手と反対の手も器用に使うことが分かった。このような利き手と反対の手を利き手と同様に使う行動は,餌付け群で生活するために必要となる行動を速く,効率よく行うために起こった前肢の行動発達であると考えた。