主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 35
開催地: 熊本
開催日: 2019/07/12 - 2019/07/14
ボノボとチンパンジーは互いに進化的に最も近縁な二種であるにも関わらず、他集団のオスに対する攻撃性が異なる。チンパンジーのオスは他集団のオスを連合攻撃して殺戮する等、激しい攻撃性を示すのに対し、ボノボのオスではそのような激しい攻撃性は見られない。このような攻撃性の違いは、隣接集団に属するオス間の血縁の分化が、ボノボよりもチンパンジーで大きいからである可能性がある。そこで本研究では、隣接集団に属するオス間の遺伝的分化度を両種間で比較した。コンゴ民主共和国ルオー学術保護区ワンバ村周辺に生息する野生ボノボ3集団、ウガンダ共和国カリンズ森林保護区内に生息する野生チンパンジー2集団の全オトナオスから非侵襲的に遺伝試料を採取した。採取した試料を分析し、全個体の常染色体上STR8座位の遺伝子型、およびY染色体上STR10あるいは12座位の分析によってY染色体ハプロタイプを決定した。遺伝分析の結果を用い、集団内、および隣接集団の全個体間の血縁度を推定した。また、常染色体上、およびY染色体上遺伝的分化指数(Fst)を算出した。ボノボでは、集団内のオス間の平均血縁度が隣接集団のオス間のそれよりも有意に高かったが、チンパンジーでは、集団内と隣接集団のオス間で差が見られなかった。常染色体上、Y染色体上遺伝的距離は両種で同程度の値を示した。両種は、オスの出自集団内での定住性、オス間の高い繁殖成功の偏りなどの特徴を共有していることから、隣接集団のオス間の遺伝的分化には明確な差が生まれないのかもしれない。両種間の他集団のオスに対する攻撃性の違いは、メスの交尾可能期の長さの違いや、パーティサイズの違い等、別の要因で説明できると考えられる。