霊長類研究 Supplement
第35回日本霊長類学会大会
セッションID: B01
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口頭発表
二足歩行時の前額面における体幹姿勢調節:ヒト、シロテテナガザル、ニホンザルの比較
*木下 勇貴後藤 遼佑中野 良彦平崎 鋭矢
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抄録

ヒトの二足歩行において,骨盤は立脚初期から中期にかけて遊脚側へ傾くが,中殿筋の遠心性の活動が傾斜を制限し,身体が遊脚側に倒れるのを防いでいる。この時,胸郭は骨盤と反対に支持脚側に傾く。つまり,骨盤と胸郭は前額面内で逆方向に側屈する。一方,チンパンジーの二足歩行では,ヒトとは逆に,骨盤は立脚期に支持脚側へ傾斜する(O’Neill et al., 2015)。さらに,胸郭もまた骨盤と同様に支持脚側に傾くため,身体重心の左右移動がヒトよりも大きい(Thompson et al., 2018)。しかし,ヒトとチンパンジー以外の霊長類における二足歩行時の体幹運動に関する研究はほとんどないため,ヒトのような骨盤と胸郭の側屈様式が,他の霊長類にはない固有の戦略かどうかは未だ明らかでない。そこで,シロテテナガザルとニホンザルの二足歩行中の前額面内体幹運動を計測し,彼らの体幹姿勢の制御パターンについて検証した。被験体には,シロテテナガザル(メス1個体),ニホンザル(オス5個体)を用い,比較としてヒト被験者についても計測した。第5胸椎,第12胸椎(シロテテナガザルは第13胸椎),第3腰椎,仙骨の直上皮膚に貼付した実験用クラスターマーカーの三次元座標から,二足歩行時の胸郭中部,胸郭下部,腰部,および骨盤の前額面内での回転角度を見積もった。その結果,ヒト以外の2種の全個体において,立脚期に支持脚側へ骨盤,腰部,胸郭を傾けるというチンパンジーと同様の動きが見られた。したがって,立脚期における遊脚側への骨盤傾斜と立脚側への胸郭側屈を伴う体幹運動は,ヒトに固有の戦略である可能性が高い。また,ニホンザルとテナガザルの間にも違いが見られ,ニホンザルでは足部接地時付近にある骨盤側屈角度のピークが,テナガザルでは立脚中期に観察された。さらに,ニホンザルは種内変異が大きく,常習的に二足歩行をしない種における前額面での安定性維持の方法には,種間差と個体間差が大きいことが示唆された。

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© 2019 日本霊長類学会
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