霊長類研究 Supplement
第36回日本霊長類学会大会
セッションID: P21
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ポスター発表
飼育下カニクイザル(Macaca fasciculalis)における臓器重量の加齢性変化
木村 直人山田 将也藤森 唯武田 康祐岡部 直樹新宅 勇太伊谷 原一
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抄録

剖検症例を用いて調べられた日本人の年齢群別の臓器重量の調査によると,腎臓の臓器重量は50歳前後にピークがあり,80歳以上の年齢群まで漸減傾向にあったことが報告されている。年齢群別の諸臓器の発育と老化を知ることは人における福祉や医療にとって重要な情報のひとつとなっている。一方,サル類においては同様の調査はほとんどみられず,カニクイザル(Macaca fasciculalis)においても実験室内で飼育された個体の発育期のデータをまとめたものがあるくらいで,屋外放飼あるいは群れ飼育された個体における幼年期から老年期にいたるまでの臓器重量の推移調査は見当たらない。日本モンキーセンターでは,1958年からカニクイザルの群れ飼育を開始し,現在まで継続している。この間,生年月日や死亡年月日などの個体の情報や剖検記録などの資料が長期的に蓄積されてきた。本研究では,臓器重量の加齢性変化から各臓器が衰えを迎え老化に向かうターニングポイントをつかむことを主な目的とし,①カニクイザルの剖検録から生年月日と死亡年月日が明らかな65個体を対象に,脳・脾・肝・心・腎といった諸臓器の所見を精査し,病変記述のない臓器(死亡時に異常のみられない臓器)の重量データを抽出,②死亡時年齢と臓器の重量をプロットし,臓器の発育と衰えの様子を視認化,③必要に応じて体重補正を行いながら,相関曲線から臓器重量のピーク時年齢を求めた。その結果,臓器重量の増減には,(ⅰ)主に加齢と体重の多寡に伴って増減する臓器(肝,心,腎),(ⅱ)体重の多寡に影響されずS字状に増減する臓器(脳,脾),の2つのパターンに分類された。また,臓器重量が減少に転ずる年齢は肝臓で18.9歳,心臓で19.4歳,腎臓で20.2歳であった。これらのことからカニクイザルの老化に向かうターニングポイントは19歳前後の時期にあることが推察された。

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© 2020 日本霊長類学会
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