主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 37
開催地: オンライン開催
開催日: 2021/07/16 - 2021/07/18
p. 28-29
アカゲザルなどの一部のマカク類は10月から2月頃にかけて時期特異的に繁殖を行う。これまでの組織学的、内分泌学的な比較解析によって、マカク類では精巣サイズや精子形成の状態が 繁殖期と非繁殖期で 異なっていることがわかっている。しかし、サンプル取得の困難性もあり、年間を通した精子形成の連続的な動態は未解明である。また、季節性精子形成を制御する分子メカニズムは、霊長類では殆ど解明されていない。本研究では、屋外飼育のアカゲザルから精巣を定期採材する貴重な機会を得たため、これらのサンプルを用いて年間を通した精子形成動態を組織と遺伝子発現の両面から詳細に明らかにするために、2019年10月から2ヶ月おきに1年間、計6個体の野外飼育のアカゲザルから精巣を採材し、組織学的解析並びに精巣を構成する細胞や細胞周期に関わる遺伝子の発現動態解析を行った。解析の結果、精巣サイズは2 月で最大となり、精細管全体面積と内腔面積は異なった季節変動パターンを示すことが確認された。また、精子幹細胞のマーカー遺伝子や細胞周期制御因子の発現パターンから、精子幹細胞の増殖は10月で特異的に起こるのに対し、精子幹細胞の分化は繁殖期を通して持続的に行われていることが示唆された。加えて、精巣内で生殖細胞の増殖・分化の制御を担うセルトリ細胞に関連する遺伝子の発現動態から、生殖細胞の増殖・分化の制御に関わるいくつかの遺伝子発現に変動が見られた。この結果からセルトリ細胞の季節変動が季節性精子形成に大きく関与することが考えられる。本発表では、これらの結果を統合して見えてきた、季節性精子形成におけるセルトリ細胞の役割について議論したい。