主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 39
開催地: 兵庫県
開催日: 2023/07/07 - 2023/07/09
p. 50-51
ヒトの子どもは1歳頃に初語を獲得する。先行研究では、主に初語の獲得以降のヒトの子どもの言語発達が調べられてきた。これらの発達研究は、高度に階層化されたヒトの言語が突然出現するのではなく、豊かな物質環境での社会的相互作用を通じて徐々に言語発達が進むことを示す。さらに言語は、ヒト幼児やヒト以外の霊長類と発達的・進化的に連続性のある認知基盤をもつと考えられる。ヒト乳児、言語獲得の初期段階にあるヒトの子ども、そして大型類人猿の認知発達を比較することで、言語の起源を探ることができる。本発表では、チンパンジーの物体操作に関する先行研究を再解釈し、物を組み合わせる定位操作における階層性を明らかにする。積木をつむ課題と入れ子のカップをかさねる課題において、飼育下のチンパンジーと2〜3歳のヒトの子どもは、試行錯誤的組み合わせとサブアッセンブリ方略を混在させるという同様の行動パターンを示した。しかし、手本の積木の色順を模倣してつむ課題では、2〜3歳のヒトの子どもの優位性が示された。これらの結果は、定位操作の階層性においては両種の類似性を示した一方、チンパンジーでは模倣的な定位操作が困難なことを示したと言える。チンパンジーにも、描画課題や手段-目的課題の通過、ふり遊びの出現が認められ、社会的学習による文化的行動の獲得が可能である。霊長類に共通する認知発達を比較するために、身ぶりやオノマトペに着目した言語獲得初期のヒトに関する、より詳細な研究が必要である。