主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 39
開催地: 兵庫県
開催日: 2023/07/07 - 2023/07/09
p. 50
動物園では動物が野生での平均寿命を超えて生きることがある。高齢個体は若齢個体に比べ、健康問題の発生やそれに伴う苦痛の可能性などQOLへの懸念が頻出する。適切な飼育管理のためにはQOL評価が重要となるが、イヌやネコを対象としたものと比較し動物園動物での先行研究は少ない。そこで今回、2021年9月に43歳で死亡したアカゲザル(イソコ・メス)を対象に、定量的な行動観察と定性的なQOL評価を実施しその関連を検討した。2021年1月から8月まで監視カメラ越しに24時間の行動(休息・移動・摂食・探索・社会行動)を5分ごとに記録した(各月1日・合計192時間)。また動画からGaitKeeper2を使用して歩様を解析した。定性的なQOL評価はWildlife Reserve Singaporeで使用しているシートを改定し、痛み・維持活動・食欲・動き・操作・環境への働きかけのスコア化を2週間おきに実施した。
結果、一貫して24時間のうち80%以上の時間を休息に費やしていた。昼間と夜間では昼間の方が活発で、休息時間は長いものの活動リズムは保たれていた。2021年1月には社会交渉が4月には探索行動が記録されたが、それ以降は休息・移動・摂食のみが記録された。移動・社会行動・探索・摂餌などの行動の割合がQOLのひとつの指標として用いられるが、その割合は低下していった。歩様解析からは、若齢個体に比べて2021年1月の時点ですでに速度が遅かったが、月の経過とともにさらに遅くなった。また、1日の休息頻度と歩行速度には相関が見られた。2021年7月頃から歩行に関して左右のバランスが乱れるなどの特徴も見られた。この時期には定性的なQOL評価のスコアが低下していた。また、病気の影響により血液検査の総白血球数の値も増加していた。これらの結果と先行事例をもとに、動物園における高齢動物のQOL評価方法を議論したい。