霊長類研究 Supplement
第41回日本霊長類学会大会
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ポスター発表
ニホンザルにおいてアカンボウの存在が社会ネットワークに与える影響の検討
貝ヶ石 優
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会議録・要旨集 オープンアクセス

p. 121

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抄録
霊長類において、アカンボウは母親以外にとっても魅力的な存在である。アカンボウを持つ母親に対し、周囲の個体は積極的に関わりかけることでアカンボウと関わろうとする。また母親は他個体との接触を避け、他個体によるアカンボウへの干渉を防ぐこともある。このように、アカンボウの存在は個体の社会交渉パターンに大きな影響を及ぼす。このような変化は、個体間のみならず、集団の社会ネットワーク全体に影響する ことが予測される。本研究では、淡路島ニホンザル集団を対象に、複数の交尾期・出産期における毛づくろいネットワーク構造を分析した。ニホンザルは季節繁殖性であり、本集団では毎年10月から3月ごろまで交尾ペアが観察され (交尾期)、5月から9月にかけて出産が起こる (出産期)。淡路島集団の全成体メスを対象に、2017年から2024年にかけて記録した毛づくろいデータから、特に集中的な観察を行った5年間の交尾期および4年間の出産期についてネットワーク分析を実施した。それぞれのメスについて、当年産まれのアカンボウがいる個体、前年産まれの1歳子を持つ個体、養育中の子を持たない個体に分けて、交尾期と出産期とで社会ネットワーク上の中心性がどのように変化するかを検証した。出産期には、養育中の子がいない個体に比べ、アカンボウのいる個体の中心性が有意に高かった。1歳子を持つ母親は、子を持たない個体との中心性の差は見られなかった。他方、交尾期には、アカンボウを持つ個体の中心性が、子を養育しないメスよりも低下する傾向が見られた。以上の結果は、アカンボウの魅力が特に出産期に強く表れること、および交尾期にはそれらの個体が他個体との社会的関わりを避けることを示唆している。本研究ではさらに、統計的社会ネットワークモデルにより、アカンボウの存在が社会ネットワーク構造に与える影響についてより詳細な検証を行う。
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