2008 年 15 巻 p. 337-344
長野県では全国に先駆けて, 公共工事の入札制度改革に取り組んできた.その中の1つが指名競争入札方式から受注希望型競争入札方式への転換である.受注希望型競争入札方式の導入によって, 落札率が減少し談合はほぼ排除されたとみなせる反面, 県内の建設業者にとっては競争の激化につながり, かつ年々公共工事の投資額が減少している背景と相まって, 厳しい経営状況に追い込まれた.そこで, 建設業界が衰退していくのを防止するために長野県では予定価格に対して失格基準価格を平成15年に設定した.長野県の失格基準価格は時代状況, 背景により, 数度改定されているが, 本研究では長野県が平成16年に実施した建設工事コスト調査, 並びに長野県建設業組合が平成18年に実施した建設工事コスト調査のデータを用いて, 失格基準改定の前後における建設工事コストの比較を主に損益率という指標を用いて行った.
その結果, 本研究では失格基準改定により落札率や損益率は改善したが, 依然として県内建設業者は厳しい経営状況であることが指摘できた.