関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第31回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 170
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荷重応答期の底屈モーメントに着目し、ラクナ梗塞を呈した症例に対して急性期理学療法を行う中で装具なし歩行を獲得した一症例
赤羽 智樹鵜飼 正二大塚 功
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抄録
【目的】
脳卒中患者に対する装具療法は脳卒中治療ガイドラインにおいて推奨されており、その有用性について多く報告されている。一方で、短下肢装具から装具なし歩行に至るまでの判断基準や理学療法(PT)介入に関する報告は少ない。今回、ラクナ梗塞患者に対して急性期から油圧緩衝器足継手付長下肢装具(KAFO)、Gait Solution Design (GSD)を使用し、最終的に装具なしでの歩行を獲得した症例を経験したので報告する。
【方法】
症例は左上下肢のしびれを主訴に来院し、右被殻から放線冠にかけてラクナ梗塞を呈した64歳男性で病前mRS1。2病日からPTを開始し、左下肢12grade 6、MMT前脛骨筋0、歩行分析にgait judge systemを用いて荷重応答期の底屈モーメントを測定した。歩容は麻痺側立脚期に膝折れが生じアライメントの崩れを認めた。本症例の退院時目標を装具なし歩行とし、急性期からKAFO、GSDを使用した歩行練習を実施し、装具を外す条件に、踵ロッカーが機能し、立脚期の膝アライメント、クリアランスが保てることとした。また、踵ロッカー時の前脛骨筋の活動指標に底屈モーメントの測定を挙げた。なお、本症例に症例報告をする主旨を伝え了承を得た。
【結果】
入院後、神経症状の増悪を認め、5病日に起立練習、KAFOを用いた歩行練習を開始、12病日にはGSDを使用した歩行練習、麻痺側立脚期のステップ練習を行った。22病日には左下肢12grade9、MMT前脛骨筋3、底屈モーメント3.3Nmとなり、GSDを装着した上で上記条件を満たした為、GSDを使用し病棟内歩行自立とした。31病日に自宅退院し、月1回の外来リハビリと週2回の訪問リハビリを継続した。254病日に12grade左下肢11、MMT前脛骨筋5に改善し、底屈モーメントは徐々に低下し1.8Nmとなり、装具なし歩行において上記条件を満たした為、装具なし歩行獲得とした。
【考察】
踵ロッカーにおける荷重応答期の底屈モーメントは前脛骨筋の遠心性収縮によりコントロールされており、先行研究において健常者の底屈モーメントは平均1.9Nmと報告されている。本症例において底屈モーメントが徐々に低下してきたことは、踵ロッカー時に前脛骨筋の遠心性収縮が可能になってきた事が考えられ、装具を外す為の判断基準の一つとして底屈モーメントの測定は有用な情報となることが考えられた。
【まとめ】
急性期ラクナ梗塞患者に対してGSDを用いたステップ練習、歩行練習を実施した。動作分析や荷重応答期の底屈モーメントを計測することは、装具を外すための判断基準の一つとして用いることが出来ると考えられた。
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© 2012 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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