本論文の目的は,学力問題を背景として改革を迫られているドイツの幼児教育において,幼児期の学びのプロセスの質をめぐってどのような議論が行われているのかを明らかにすることである。方法としては,コンピテンシー志向の幼児教育カリキュラムの改革動向と,それに対する批判的立場から展開されている人間形成アプローチに焦点を当てた検討を行う。
検討の結果,①コンピテンシーモデルにおいては,幼児期に求められる能力のモデル化が目指されていること,②人間形成アプローチにおいては,個々の子どもの主観的な学びの方法に着目し,多様な学びのプロセスを描くことによって,幼児期の教育的課題にアプローチがなされていることが明らかとなった。