2018 年 56 巻 2 号 p. 87-98
本研究の目的は,来日第二世代保育者(子どもとしての来日経験をもつ保育者)のキャリア形成の過程の描出である。TEMを用いて3名の保育者(南米からの日系移民)の語りを可視化することで,アイデンティティの揺れを含むキャリア形成の過程を提示した。これにより,「母国語が話せる」「類似の背景をもつ移民の子たちへの共感的理解ができる」ことの,役割意識への影響が描出された。そして,諸言語への自信の程度が,キャリア形成に影響した可能性がある。また,来日第二世代保育者への優れた通訳者としての期待が,大きな負担感に繫がっていた。したがって,このような難しさを理解することが,来日第二世代保育者を支えることになろう。