抄録
本稿の目的は,日常的であるがゆえに無自覚的に行われている保育者の子ども理解がどのように行われているかを,エスノメソドロジーの手法を用いて明らかにすることである。エスノメソドロジーが目指すのは,ある共同体の成員がその共同体において当たり前に用いている方法論的知識を記述することであり,そのためにその共同体の成員が日常的な活動をどのように組織するのかに着目する。それを保育者と子どもとの相互行為の分析に適用した結果,例えば子どもを「待つ」ことができたか否かが自らの子ども理解の適切性を判断する際の重要な判断材料となるように,保育者は保育文化の規則との関係性の中で子どもを理解していることが明らかとなった。