2022 年 60 巻 2 号 p. 151-161
本稿では,保育の質の問題についてドイツがどのように取り組んできたかについて言及する。特に発展途上とされてきたドイツでは,保育整備がなぜ急務とされてきたのか,そしてなぜ保育の質について議論が盛んになってきているのかをドイツの保育の政治的歴史的な特殊性から捉え直す。2001年の「PISA ショック」以降,ドイツでは国を挙げて保育の整備に取り組み,その成果が報告されている。近年では保育者の労働環境や心理的,身体的な健康も保育の質に影響を与えるリスク要因であると考えられている。また子どもの”well-being”という側面を指標にすることで新たな「質」を見直す試みがされている。