抄録
本研究は,幼稚園の3〜4歳児クラス期の2年間の縦断的観察に基づき,仲間遊びでのポジティブな感情表現としての「かわいい」への言及について,その関係調整的役割に着目し検討した。言及状況及びやりとりの分析から,3歳児クラス期前期の保育者の介在する状況での萌芽的な言及を経る中で,3歳児クラス後期から一方主導的な言及も含めて,子どもたちが「かわいい」への言及を関係調整的に用い始めるようになること,4歳児クラス期になると,子ども同士での愛着共有や,価値づけ,「かわいい」ものの実現化等を通じて同言及をより明確に関係調整的に用いるようになることが示された。これらは感情コンピテンスの発達の観点から重要といえる。