抄録
本研究は,文化的多様性のある保育現場の異年齢保育に注目しながら,多文化保育の実践を考究する。多文化共生を理念とする保育園でのフィールド調査の参与観察と保育者のインタビュー調査を分析対象とする。逸脱の解釈をされてきた文化・言語的差異は,異年齢児とともに自由保育を行う開放的な空間の中で,多様性の一つに変換されることで包摂されていた。多様な関係性の中で主体的な参加をすることで,子どもたちは異文化・異言語の課題を乗り越える方法を見つけていた。保育者は,異年齢保育を支える実践者として保育環境の整備に取り組む一方で,異言語コミュニケーションの支援や既有の専門性の活用などにおいては課題を感じていた。