2023 年 61 巻 2 号 p. 19-30
幼保一元化論は保育学の伝統的な論点である。先行研究は,幼保一元化に対する親の混合的な態度と,より手頃な保育料への選好を示してきた。本稿の目的は,幼保の所管・施設面での一体化が保育料軽減率に及ぼす影響を検証することである。自治体保育担当課への質問紙調査と統計サイトを通して,データを収集した。重回帰分析の結果,幼保の所管を一体化している自治体や,公営認定こども園を設置している自治体ほど,保育料軽減率が高い傾向にあることを見出した。この結果は,親の経済的要望に対する行政の応答性が,幼保一体化によって高まることを示唆している。今後,幼保一体化の実利を示すエビデンスを蓄積するべきである。