抄録
本稿では,0歳児クラスの乳児の動画観察から,乳児の手が物に触れた場面を抽出し,接触した物,接触の持続時間,接触に伴う出来事や大人の関わりを特定し,乳児の環境との関わり方の発達的変化を検討した。その結果,ハイハイや伝い歩き等の移動獲得後の乳児は,移動獲得前の乳児よりも物との接触時間が短く,各乳児の物の接触時間は,大人の関わりがある時の方が,ない時よりも長かった。また,移動獲得後の乳児は,物の接触に伴う出来事や大人の関わりのヴァリエーションが増加した。本研究の結果は,乳児の物の遊びは,大人の関わりの影響を受けると同時に,乳児自らの発達状態が,物との多様な経験を生み出す機会となることを示唆している。