2011 年 13 巻 1 号 p. 1-10
定期的な身体活動が健康を増進し,非感染性疾患(non communicable disease; NCD)を予防することについては科学的根拠が既に確立している。そしてこのことが,多くの国において身体活動推進に取り組み,国家プログラムを実施する確固たる基盤となっている。世界的にみると,NCDは世界中の総死亡の60%を占めており,これらの80%は所得水準が低から中等度の国(low and middle income countries; LMIC)で発生している。NCD予防の努力を拡大する必要性,特にLMICにおいて必要であることについては,よく認識されているものの,未だに科学的根拠は予防戦略における活動や投資には活かされていない。「アクティブ(活動的)な生活」アプローチを用いて,家庭,「アクティブ(能動的)な移動」(例えば,ウォーキングやサイクリングで場所から場所へ移動すること)や余暇時間(例えば,スポーツ,レクリエーション,運動および遊び)を含むさまざまな設定において,国家戦略が身体活動を促進し,支援するべきである。しかしながら,ほとんどの国において欠如しているものは,十分な政治的取り組み(political commitment)と,そのために必要な長期的な投資である。このような理由から,身体活動の重要性,NCD予防において,たばこ規制,栄養習慣とともに身体活動は中心的役割を果たすこと,環境保全といった関連するその他の課題上の利益,などを啓発・促進するためのより大きなアドボカシー(唱道)活動の必要性がある。これらの乖離を解決し,強力なアドボカシー・ツールをこの領域に提供するために,『身体活動のトロント憲章』が作成された。専門執筆グループの方針に従い,さまざまな利害関係者,団体,政府および個人がこの憲章の内容と構造に関してコメントできるようにするため,公開で,世界的なウェブベースの協議期間を含む段階的アプローチを用いて作成された。この憲章の作成に約2年間を要し,世界すべての地域の55カ国,450名を超える個人または機関から,2000を超えるコメントが寄せられた。全体的には,身体活動の憲章を,行うべき行動とともに,国際的な合意のもとに,明確に示す必要性について強い賛同が得られた。トロント憲章は単なる健康を超えた,身体活動のあらゆる恩恵を強調している簡潔かつ明解で,国際的に同意されたコンセンサスを提供する。ここでは,教育,交通,スポーツ,レクリエーションおよび都市計画を含む関連するすべてのセクターに関する具体的な行動の例について概説されている。この憲章は,2010年5月にトロントにおいて開催された第3回国際身体活動公衆衛生会議の閉会式において公開された。それ以来,この憲章は11の言語に翻訳され,世界中の500名以上の個人および135の機関から支持の表明を受けている。今年開かれる国際連合の慢性非感染性疾患に関する総会のハイレベル会議(2011年9月)に向けて,先行する協議会で「トロント憲章」と最近発表された支援文書である「非感染性疾患の予防:身体活動への投資」を提示し,関連する議論に身体活動を含むように支援することは時宜を得ている。
(この日本語訳は,読者の利便性を考慮して著者の許可のもとに編集委員会が作成したもので,論文に含まれるものではありません。日本語訳が著者の意図にあっていない可能性もありますので,正確な意味を確認するためには原文をご確認ください)