運動疫学研究
Online ISSN : 2434-2017
Print ISSN : 1347-5827
原著
幼児の平日の外遊び時間とテレビ等視聴時間に影響する家族環境と近隣環境
渡辺 悦子 李 延秀川久保 清
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2012 年 14 巻 1 号 p. 37-46

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抄録

目的:幼児の身体活動と不活動は成人期の健康状態にまで影響することが知られており,その関連要因を理解することは重要課題である。幼児の平日の外遊びとテレビ等視聴時間に影響する家族・近隣環境について明らかにすることを目的とした。

方法:東北地方A市内の全保育施設に通園する3~6歳児2598名とその母を対象とし自記式質問紙調査を実施した。調査内容は幼児の身体活動(平日の外遊びとテレビ等視聴時間),家族環境(祖父母同居,兄弟姉妹数,母の就業,母の身長と体重),近隣環境(安心して遊べる場所,一緒に遊ぶ友だち),幼児の属性(性と年齢)であった。外遊び時間(1時間以上/未満),テレビ等視聴時間(2時間以上/未満)と家族・近隣環境との関連について,家族環境,近隣環境,幼児の属性を調整した多重ロジスティック回帰分析で検討した。

結果:分析対象は1634名(平均 4.2歳,男児52.9%)であった。外遊びが1時間/日以上であることは核家族であること(オッズ比[95%信頼区間], 0.76 [0.60-0.97]),一緒に遊ぶ友だちがいないこと(0.36 [0.28-0.45])と有意な負の関連がみられ,これらは短い外遊び時間のリスク因子であった。テレビ等の視聴が2時間/日以上であることは母が専業主婦であること(1.29 [1.02-1.63]),母が肥満であること(2.24 [1.50-3.34]),一緒に遊ぶ友だちがいないこと(1.34 [1.09-1.65])と有意な正の関連がみられ,長いテレビ等視聴時間のリスク因子であった。

結論:家族内および近隣で一緒に遊ぶ仲間がいないことと母が専業主婦であること,母が肥満であることが幼児の身体不活動に影響することが示唆された。幼児の健康的な生活習慣が形成されるよう,家族・近隣環境の両方にアプローチする必要がある。

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© 2012 日本運動疫学会
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