運動疫学研究
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総説
2020年東京オリンピック・パラリンピックが国民の身体活動量に与え得る効果
Adrian Bauman 鎌田 真光
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2015 年 17 巻 2 号 p. 75-80

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抄録

2020年に東京でオリンピック・パラリンピック(以下,五輪)が開催されることは,そのレガシー(長期にわたる,特にポジティブな影響)として,健康・身体活動レガシーを創出する機会となる。本稿では,まず先行研究をもとに,過去の五輪が開催国の身体活動およびスポーツの実施率向上につながったかを検証する。2000年夏季シドニー大会および2010年冬季バンクーバー大会に関する研究と,2012年夏季ロンドン大会に関する予備的検証では,国民代表サンプルの成人もしくは子どもを対象として,大会開催前後の複数回にわたる連続的な調査をもとに評価されたが,いずれも身体活動またはスポーツ実施率の増加は認められなかった。2020年東京大会の開催は,健康分野,スポーツ分野,オリンピック・ムーブメント,そして運動疫学の専門家が一体となって,身体活動・スポーツの促進に向けてマス・メディア・キャンペーンや地域社会全体を巻き込んだ複合的な介入を計画・実施・評価する機会となり得る。こうした取り組みは五輪開催の数年前から開始する必要があり,大会開催の契機を十分に生かさなければならない。レガシー実現の達成度について,その潜在的な効果を評価するには,日本国民の代表サンプルを対象とする標準化された評価方法に基づくモニタリング・システムが必要である。

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© 2015 日本運動疫学会
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