2019 年 21 巻 2 号 p. 104-112
目的:東日本大震災後,仮設住宅生活の高齢者において,不活動による身体機能の低下が報告されている。不活動対策の模索はなされているが,社会参加型の運動介入の不活動への予防効果は明らかではない。そこで,個人の身体機能に応じた社会参加型の運動課題の推奨が,高齢者の不活動の改善として有用であるかを検証するための予備的検討を行った。
方法:仮設住宅に居住する65歳以上で1週間の活動量が10 METs・h/w未満の不活動者18人を対象とし,2015年7月~2016年1月まで月1回の運動教室と3か月ごとの評価を行った。社会参加型の運動課題は,ガーデニングおよび近隣の寺社への参拝のいずれかを対象者の希望により付与した。
結果:1か月間で最大の活動が行われた1週間の平均活動量は,ベースライン時から3か月後に有意な増加(7.6±1.9 METs・h/w → 20.2±11.2METs・h/w, p<0.01)を認めたが,ベースライン時から6か月後は,有意な増加(7.6±1.9 METs・h/w → 14.1±12.1 METs・h/w, p=0.24)とはならなかった。課題別では,近隣の寺社への参拝群(7.9±1.1 METs・h/w → 13.2±3.3 METs・h/w, p<0.05)と,ガーデニング群(7.3±2.5 METs・h/w →27.3±11.7 METs・h/w, p<0.05)のそれぞれで3か月後の活動量に有意な増加を認めたが,6か月後では,近隣の寺社への参拝群(7.9±1.1 METs・h/w → 9.6±5.4 METs・h/w, p=0.54)およびガーデニング群(7.3±2.5 METs・h/w → 21.6±15.9 METs・h/w, p=0.37)において両群とも有意な変化はみられなかった。
結論:本研究では,個人の特性を考慮した社会参加型の運動課題の推奨が短期的には有効である可能性を得た。