抄録
高齢期の健康づくりにおいて,運動を継続して行うこと(以下,運動継続)の重要性は明らかである。運動を他の人と一緒に行うこと(以下,他者との運動実践)は,高齢者の運動継続の促進に役立つ可能性がある。しかし,他者との運動実践と運動継続との関連性に関する知見は,十分に整理されていない。本稿では,他者との運動実践と高齢者の運動継続との関連について,高齢者自身の認識に注目した既存知見の動向と,一人での運動実践と比較検証した既存知見の動向を概説した。前者の研究は,質的にも量的にも豊富に存在する。これらの既存知見では,他者との運動実践が,感情的な支援や楽しさ,充足感の共有を通じて運動継続に寄与するものとして,高齢者に理解されていることが示されている。一方で,一緒に運動を行う仲間がいないことが,運動継続の阻害要因として捉えられていることも明らかにされている。後者の研究では,他者との運動実践の形態を運動組織に絞った知見は散見される。しかし,先行研究の知見の一貫性は乏しい上,他者との運動実践を,「運動組織」よりも幅広くとらえた研究は限られている。今後の展望として,前者と後者の知見にみられるナレッジギャップを踏まえ,他者との運動実践をより多様な側面から捉えた上で,運動継続との関連を検証していくことが重要であろう。