2010 年 3 巻 2 号 p. 13-25
本稿では,林産物貿易の自由化の進展により急増した森林伐採由来のCO2排出を削減するための森林環境政策として,林業経営者に自ら森林を保全させる動機付けを与える森林保全への対価(森林保全インセンティヴ)を支払う経済的誘因政策を考え,その実現可能性について検討した.その結果,森林保全インセンティヴに基づく経済的誘因政策は,幾つかのCO2の削減方法よりも費用対効果が高いことを明らかにした.また,この政策が,直接規制の際に必要な監視費用等を要しない点,対価の具体的な配分方法を明示する点,林業経営者の生計を圧迫しない点で利点を持ち,政策手段としての実現可能性が高いことを明らかにした.