抄録
本研究では,プロンプト・フェイディング法による立ち上がり動作練習を考案し,その効果について通常の指導方法と比較・検討した.対象は認知症を呈する82歳女性.ベースライン期(3日間)に通常の指導方法として口頭指示のみによる立ち上がり練習を実施した.介入期(4日間)では,練習目的と手順が記載された用紙を提示した.更に動作の目標物を設置することで動作が成功する練習プログラムを創出した.そして動作が成功した場合にそれらのプロンプトを徐々にフェィディングした.その後,3日間のフォローアップ期を設けた.それぞれの期において口頭による動作の修正回数をカウントした.ベースライン期では,平均3.2回の修正が必要であった.修正回数は,介入期で0.1回,フォローアップ期で0.2回に減少した.以上のことから,今回のプロンプト・フェイディング法による練習方法は,適切な立ち上がり動作を定着させる上で有効なものと考えられた.