実験音声学・言語学研究
Online ISSN : 1883-6763
特集論文
フィールドワークの試行錯誤
三浦 弘
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2017 年 9 巻 p. 131-138

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抄録

音声学のフィールドワークには3 つの過程がある。(1)どのようにして適切な被験者を見つけ出し、最適な音声を録音するか、(2)収録した音声の分析(特に音響的分析)と図表の作成、(3)分析結果からの音声・音韻の考察である。本稿は(1)にテーマを絞った実地踏査のための方法論である。(2)と(3)には多数の参考文献があるが、(1)については資料が少ないからである。最も大切なことは現地の研究協力者を確保することだと言える。大学や研究所に協力を依頼すると理解が得られやすく、録音施設までも借りられることがあるので、高音質な録音ができる。しかし、被験者が学生や大学関係者だけになってしまうことが多く、基層方言(basilect,労働者階級の地域方言)はなかなか収録できない。そこで公的機関等へ協力を依頼することになるが、現地にコーディネーターとしての協力者がいるとスムーズに交渉が進む。まだ模索中ではあるが、ようやく形成されてきた(1)の方法について自らの試行錯誤を報告する

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