四ヶ村溝(しかむらみぞ)は,伝統的な形態の堰によって川から取水された水を導水する農業用水路である。本報の目的は,この水路沿いの景観構造を起点から終点に至るまで網羅的に把握し,地形に応じた灌漑景観の有様に関する知見を得ることである。調査分析の結果,区間によって地形における水路の位置づけが違うことがわかった。さらに,水路と地形との間に同じ関係が継続する区間の中でも,林地や建物群の有無や水路との位置関係の違いが認められた。このような違いは,水路と地形との関係が一様な事例を対象とした前報では認められなかったことであり,地形に即した灌漑の景観に関して,新たな知見が得られたと考えられる。