都市計画報告集
Online ISSN : 2436-4460
15 巻, 2 号
都市計画報告集
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
  • 彦根市内の新旧2地区の街路を対象として
    宮川 絵充, 村上 修一
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 15 巻 2 号 p. 66-69
    発行日: 2016/09/05
    公開日: 2022/06/08
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    蘚苔類(コケ植物)は森の始まりと言われる。我々の足元からそれは起こっている。少なくとも滋賀県彦根市の駅前にある新旧2地区の路上で,そのことが確認された。旧地区の方が顕著であり,路上に占める蘚苔類の分布面積の割合は,新地区の6倍であった。ただし,近傍の林縁からの距離,塀などの垂直要素の有無や種別,隣接家屋の方位による分布状況の顕著な差は認められなかった。一方,人為的撹乱の影響が推察される不自然な形の定着範囲が認められた。都市生活者の日常的な行為に左右されながらも,様々な環境状況のもとで,数十年という長い時間をかけて着々と定着範囲を広げている蘚苔類の様子の一端が明らかとなった。

  • 高知県四万十市の四ヶ村溝を事例として
    村上 修一
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 15 巻 2 号 p. 70-74
    発行日: 2016/09/05
    公開日: 2022/06/08
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    四ヶ村溝(しかむらみぞ)は,伝統的な形態の堰によって川から取水された水を導水する農業用水路である。本報の目的は,この水路沿いの景観構造を起点から終点に至るまで網羅的に把握し,地形に応じた灌漑景観の有様に関する知見を得ることである。調査分析の結果,区間によって地形における水路の位置づけが違うことがわかった。さらに,水路と地形との間に同じ関係が継続する区間の中でも,林地や建物群の有無や水路との位置関係の違いが認められた。このような違いは,水路と地形との関係が一様な事例を対象とした前報では認められなかったことであり,地形に即した灌漑の景観に関して,新たな知見が得られたと考えられる。

  • アポトーシス(細胞自死)からネオトニー(幼形成熟)まで
    谷口 守, 森 英高
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 15 巻 2 号 p. 75-80
    発行日: 2016/09/05
    公開日: 2022/06/08
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    都市の成長・拡大と生物学的な進化のアナロジーはおよそ100年の長い歴史を持つ。その一方で、現在は人口減少時代において持続可能な都市の有り方を指し示す新たな退化論の登場が待たれている。本論説では退化は進化の一形態であるというもとで、その性能を検討する上での8つの視点を提示した。具体的には、1)細胞自死、2)減量化、3)低機能化、4)先祖返り、5)擬態、6)半透膜化、7)自切、8)幼形成熟である。このうちアポトーシスはあらかじめプログラムされた細胞の自死を指す。また、ネオテニーは進化のコマを進める場合の幼形成熟を意味する。さらにこれらの概念の理解に加え、進化的に安定な地域システムの構築が必要となっていることを論じた。

  • 藤田 晃大, 真鍋 陸太郎, 村山 顕人, 大方 潤一郎
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 15 巻 2 号 p. 81-86
    発行日: 2016/09/05
    公開日: 2022/06/08
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    近年、日本では人口減少や超高齢社会に対応するため、新たな都市計画論が提案されている。本研究では、近現代都市計画論と近年の日本の都市計画論の地域サービス機能の計画内容について概観し、①計画背景、②計画規模・構造、③交通、④想定されているケアサービス機能、の4つの視点から比較を行うことで、近年の日本の都市計画論の歴史的な位置づけを明らかにすることを目的とした。その結果、近年の日本の都市計画論の歴史的な位置づけは、1)近現代都市計画論の延長線上にあること、2)既成市街地を対象とする現代的な都市計画論の特徴を有していること、3)人口減少・超高齢社会への対応を志向していること、4)3つの都市計画論が並列して示され、統合的な都市計画論としては完成していないこと、の4点に整理できることが示された。

  • 茨城県常陸太田市における住民の交通行動を例に
    山根 優生, 森尾 淳, 谷口 守
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 15 巻 2 号 p. 87-92
    発行日: 2016/09/05
    公開日: 2022/06/08
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    地方部における持続可能な地域構造として着目される小さな拠点の実現には「コンパクト+ネットワーク」の両側面から検討を行う必要がある。しかしながら都市部と比較し過疎地域等では定量的分析に耐えうる規模の交通行動調査の例が少ない。本研究では茨城県常陸太田市のアンケート調査から生活行動の実態を明らかにすることで、小さな拠点の存立要件には施設の有無以外に、地区外の大規模施設集積地を加味した際のアクセシビリティや、普段から住民に利用される幹線道路の存在を考慮する必要を示した。今後小さな拠点の設定を進める上では設定しようとする地区が存立要件を満たすか確認するとともに、今後は生活利便施設によらない精神的よりどころとしての「小さな・小さな拠点」の可能性も含めた検討が望まれる。

  • 藤田 晃大, 樋野 公宏
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 15 巻 2 号 p. 93-96
    発行日: 2016/09/05
    公開日: 2022/06/08
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    本論文では,まず,よこはまウォーキングポイント事業の大字別参加者割合の分析を行った。その結果,参加者割合の地理的分布は世代により異なるが,性別による差は小さいことが明らかになった。また,女性のほうが男性よりも参加者割合の高い大字が多いことも明らかとなった。次に,大字ごとのリーダー設置施設の近接性を,リーダーから300mのカバー率と定義し,事業参加者割合との関係を分析したところ,両者に関係は見られなかった。これは,参加者に特定の施設への訪問が求められる事業の計画において,一定数の施設の選択肢を与えれば,必ずしも,施設への近接性が参加者割合に影響を与える訳ではないことを示唆している。

  • 大島 英幹
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 15 巻 2 号 p. 97-100
    発行日: 2016/09/05
    公開日: 2022/06/08
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    東京西郊には狭隘道路が多いスプロール住宅地が広く分布しているが、これらの地域は災害時に延焼したり、緊急車両の行違いができなかったりする危険を抱えている。本研究では、100mメッシュ単位の「3m未満道路率」を、関東大震災以降の市街化時期別に比較した。その結果、1960年代に市街化した地域で3m未満道路率が高いことが明らかとなった。さらに、3m未満道路率が第一種低層住居専用地域の公示地価に及ぼす影響を見た。その結果、両者に相関関係はないが、3m未満道路率を他の説明変数と組み合わせると公示地価を説明できることが明らかとなった。

  • 安留 佳佑, 吉川 徹
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 15 巻 2 号 p. 101-106
    発行日: 2016/09/05
    公開日: 2022/06/08
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    日本は縮小社会へと突入し,空き家は増加している.このため,将来の住宅供給において,既存住宅ストックを活用した住み替えや改修への関心が高まっている.住み替えや改修に関連した既往研究は多いが,地域におけるそれらの行いやすさについては,その重要性にもかかわらず研究は見当たらない.そこで本研究では,近隣への住み替えと,改修の中でも増改築を行いやすい地域があると仮定して,その発生要因と発生割合の推移を分析した.東京都の市区を調査地域として,国勢調査と住宅・土地統計調査を使用した.行いやすさに影響すると予想される要因による重回帰分析から,住戸密度が高い市区では住み替えが多く増改築が少ないことが示唆された.

  • 井竿 千鶴, 松行 美帆子
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 15 巻 2 号 p. 107-113
    発行日: 2016/09/05
    公開日: 2022/06/08
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    本研究は再々開発の現状と課題を明らかにし、今後のあり方について考察をすることを目的としている。1969年から1984年までに事業完了した市街地再開発事業のある86の地方自治体にアンケート調査を行い、121の再開発事業についての現状が明らかになった。13事業については、再々開発がすでに完了もしくは着手済みであり、14事業については検討中であった。13の再々開発事業に関しては、そのうち8事業が民間事業者によるものであった。用途については、公共的な用途から住宅や駐車場といった公共性の低い用途への変更が目立った。民間事業者による再々開発の場合は、事業はスピーディであるが、一体的な地区の再々開発は難しい。

  • 千葉県柏市カシニワ制度を対象として
    遠藤 茉弥, 雨宮 護
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 15 巻 2 号 p. 114-121
    発行日: 2016/09/05
    公開日: 2022/06/08
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    本研究では,都市郊外部の空閑地問題の解消に有効的とされる,空閑地の暫定利用を実現する制度として,千葉県柏市「カシニワ制度」に着目し,制度の想定と適用事例との間の乖離状況とその背景を明らかにした.カシニワ制度では事例の創出までに,1)登録,2)仲介,3)協定,4)運営の4段階が想定され,そのうち,登録,仲介,運営の各段階で,制度と実態との間に乖離が存在することが明らかとなった.乖離の背景には,1)団体への制度内容の周知不足,2)団体が求める距離や地目の条件と土地情報との間の不一致,3)周辺住民の広場運営への関与を可能とするような利用ルールの改変がされていないこと,の3点が示唆された.

  • ニュータウン地区を事例に
    竹本 早央莉, 山崎 元也
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 15 巻 2 号 p. 122-127
    発行日: 2016/09/05
    公開日: 2022/06/08
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    本研究は、ニュータウンを魅力的にしている住宅の接道部のみどりに注目し、それが住環境に与える印象と感性の関係を明らかにすることで、新たなニュータウンプロデュースの可能性を造園的視点から説いたものである。<br> ニュータウンの魅力は数多く存在すると思われるが、今回は自然の豊かさと地域性に的を絞り、感性を図る手法として、一対比較法やSD法を駆使した。快適と感じるみどりの量や樹木が持つ地域性の影響を、性別間や年代間の感性の違いから指摘した。

  • 島本 憲一
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 15 巻 2 号 p. 128-132
    発行日: 2016/09/05
    公開日: 2022/06/08
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    景観保全・形成を促進する有効な手法の1つとして景観協定が考えられる。そこで、本研究では、協力ゲームを活用し、景観協定の締結に関するメカニズムについて分析を行った。その検証を通じて、景観協定はある一定以上の規模の同意が満たされてはじめて締結可能になり、全員同意の時に、最も望ましい状態になることが確認された。一方で、フリーライダーが存在する場合は、景観協定の全員同意が妨げられる要因にもなりえることも確認された。そこで、景観配慮の建築に対する助成金や景観不配慮の建築に対する罰則強化がどのように機能するのかについて更なる検証を行った。その結果、その助成金や罰則強化に伴う費用は、景観協定の同意数がより少ないレベルでも締結を促進する一方でフリーライダーの数を抑制することにも寄与することがわかった。

  • ゲーム理論による考察
    島本 憲一
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 15 巻 2 号 p. 133-135
    発行日: 2016/09/05
    公開日: 2022/06/08
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    緑地保全・形成を促進する有効な手法の1つである緑地協定の締結について、提携ゲームを活用し、そのメカニズムについて分析を行った。その結果、緑地協定締結の人数やフリーライダーの人数は、緑地不配慮に伴う外部不経済の大きさ、それに対する行政の課税の実施率、に依存することがわかった。また、それらは、地価と緑地不配慮に伴う外部不経済による地価の下落の度合いにも左右されることも確認された。

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