抄録
本研究の目的は運動情報処理の速度および精度を運動課題の性質との関連で検討することである。次の課題1)〜3)を用いて運動学習実験を行なった:課題1)筋の静止性収縮量調整(40%-IEMG),課題2)握力調整(40%-MVC),課題3)位置決め(肘関節)。離散的学習スケジュールを用い,KR(Knowledge of Results)付与開始から次試行開始までの時間(KR後遅延時間)を被験者間要因として操作した。各課題における学習成績はKR後遅延時間の延長及び短縮により低下する傾向を示した。前者は短期記憶としての運動情報が忘却されたためであり,後者はKRに基づく情報処理時間の不足によると考えられた。各課題における必要最小限の情報処理時間は,課題1)から課題3)の順に短縮する傾向が認められた。これらの結果から運動情報処理は“肢位変化”“表在感覚”の関与により速度,精度を増すことが示唆された。