理学療法学
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20 巻, 2 号
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報告
  • 辻井 洋一郎
    原稿種別: 本文
    1993 年 20 巻 2 号 p. 69-75
    発行日: 1993/03/01
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    理学療法の痛み治療の効果判定のため,痛みを生理学的に解説し,理学療法の治療効果判定の基盤を探った。近年,痛みの問題は痛覚の話にとどまらず,鎮痛系や神経性炎症及び神経・免疫連関をも含む生体防御系の領域にまで広がっている。そのような痛み研究の展開・進歩にしたがって,治療は鎮痛機構を促通させて一時的な痛みの軽減・消失をえる“症候治療”と,痛みの原因病変の改善を目的とした“原因治療”とに明確に分類されるようになったといえる。現在,理学療法は両方の“治療”を行っているが,鎮痛系の生理的作用の存在からして,痛みなどの原因である病変に対する“原因治療”がこれからもより発展されるべきである。
  • 大橋 ゆかり
    原稿種別: 本文
    1993 年 20 巻 2 号 p. 76-81
    発行日: 1993/03/01
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は運動情報処理の速度および精度を運動課題の性質との関連で検討することである。次の課題1)〜3)を用いて運動学習実験を行なった:課題1)筋の静止性収縮量調整(40%-IEMG),課題2)握力調整(40%-MVC),課題3)位置決め(肘関節)。離散的学習スケジュールを用い,KR(Knowledge of Results)付与開始から次試行開始までの時間(KR後遅延時間)を被験者間要因として操作した。各課題における学習成績はKR後遅延時間の延長及び短縮により低下する傾向を示した。前者は短期記憶としての運動情報が忘却されたためであり,後者はKRに基づく情報処理時間の不足によると考えられた。各課題における必要最小限の情報処理時間は,課題1)から課題3)の順に短縮する傾向が認められた。これらの結果から運動情報処理は“肢位変化”“表在感覚”の関与により速度,精度を増すことが示唆された。
  • ―アンケート調査より―
    篠原 英記, 坂本 年将, 武富 由雄
    原稿種別: 本文
    1993 年 20 巻 2 号 p. 82-86
    発行日: 1993/03/01
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    臨床実習指導者(SV)の臨床実習生の評価を再検討するため,臨床実習を終了後の理学療法を学ぶ学生を対象に,臨床実習の評価に関する意識調査を行った。289名の学生から回答が寄せられ,次の事柄が明らかとなった。
    1)実習生が「重視してほしい」と望む評価項目と「SVが重視している」と実習生が感じた項目には,隔たりがあった。
    2)SVの行なった臨床実習学生の評価について不満に感じている学生も多かった。
    3)特に「態度面での評価が正当ではなかった」と感じている学生が多かった。
  • ―組織化学的分析―
    山崎 俊明, 灰田 信英, 立野 勝彦
    原稿種別: 本文
    1993 年 20 巻 2 号 p. 87-92
    発行日: 1993/03/01
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    荷重が困難な長期安静臥床や免荷による廃用性筋萎縮防止の一手段として,叩打による他動的筋伸張刺激を考え,その効果を組織化学的に検討した。実験的寡運動モデル(ラット)を対象とし,ヒラメ筋腱移行部に対する刺激を,筋の状態を変え(伸張位と短縮位)で一日20分,一週間に5回で二週間実施した。
    その結果,筋湿重量および筋線維構成比率には刺激による変化はなかった。筋線維断面積は,ヒラメ筋の大部分を占めるタイプ1で,伸張位刺激群が寡運動群より有意に大きかった。以上より,筋伸張位で他動的筋伸張刺激を加えた場合,完全ではないが筋線維断面積の減少を防止(萎縮を防止)できることが示唆された。
  • 坂本 年将
    原稿種別: 本文
    1993 年 20 巻 2 号 p. 93-99
    発行日: 1993/03/01
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    被教育者である学生の意見をもとに,臨床実習におけるレポート,発表,記録の指導,および実習施設のオリエンテーションのあり方について検討した。医療技術短期大学部10校の理学療法学科3年生を対象にアンケート調査を実施し,8校110名から回答を得た(回収率55%)。主な結果は以下の通りであった。
    1)レポート等の指導において約60%の学生は,書式等,形式的なことよりも,その内容に関しての指導を指導者に求め,提出までは問題に直面した時のみ指導されることを望んでいた。
    2)発表の指導においては,60%以上の学生が発表後の批評を最も必要とし,発表形式は症例に直接関係するものを有効と考えていた。一方,学生は文献抄読をあまり学習に有効な発表形式として認めていなかった。
    3)カルテ等の記録に関しては,形式的なことに対する指導を主として求める学生と,記載した内容に関する指導を主として求める学生に二分された。しかし,実際にはカルテ等の記録に関する指導は,十分に行われていないと感じている学生が60%以上を占めた。
    4)臨床実習施設の運営に関しては,その概略を知る程度でよいとする学生が60%を越えると共に,半数以上の学生は実際にもあまり説明されていないと感じていた。
  • 潮見 泰蔵, 黒澤 和生, 安藤 正志, 中山 彰博, 丸山 仁司, 小坂 健二
    原稿種別: 本文
    1993 年 20 巻 2 号 p. 100-105
    発行日: 1993/03/01
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,健常成人男性7名を対象に,10m/min,15m/minの各速度による松葉杖を用いた階段(勾配30°)昇降時の酸素摂取量および心拍数を測定し,効率値を算出することにより,その生体負担度と効率について検討した。酸素摂取量・心拍数は,下降時よりも上昇時のほうが高値を示し,昇降速度の増加による酸素摂取量・心拍数の増加の割合も上昇時のほうが大きかった。また,昇降動作全体の酸素摂取量と心拍数の間には有意な正の相関がみられた。上昇に対する下降の酸素摂取量の比は松葉杖を使用しない階段昇降の場合より大きくなった。効率値は,上昇時には特に仕事に対するエネルギーの損失が大きく,一般的な身体運動と比較して低かった。松葉杖を用いた階段の昇降は,日常の種々の身体活動と比較して,生体負担度は著しく大きく,効率は低いことから,臨床場面では十分な配慮が必要と考えられた。
短報
  • 劔物 充, 高津 久夫
    原稿種別: 本文
    1993 年 20 巻 2 号 p. 106-109
    発行日: 1993/03/01
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    2歳7か月発症のギラン・バレー症候群(Guillain-Barré syndrome; 以下G.B.S.)一症例に対する理学療法を経験した。運動障害の極期は,完全四肢麻痺を呈し,頸定も不可能で四肢近位筋群にも障害が著しかった。しかし発症後5か月で暦年齢相応の運動機能獲得に至った。理学療法では,幼児例であることから,運動障害の中心である筋力低下の評価に困難を極めた。運動発達過程を考慮した早期からの立位歩行プログラムは,患児の運動機能の向上や,動機づけとして役立ったと考えられる。
  • ―疼痛緩和が及ぼすスポーツにおける心理的影響―
    白石 貢一郎, 喜多岡 健二, 石戸谷 武
    原稿種別: 本文
    1993 年 20 巻 2 号 p. 110-112
    発行日: 1993/03/01
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    我々は,臨床で疼痛障害を有するスポーツ選手を数多く経験する。選手達にとっては,いかに競技成績を高めるかが最大の目標となるため,我々の治療やトレーニング計画の変更を容易に受け入れない場合も少なくない。そして記録更新への積極的な意欲に対し,痛みで満足な練習が出来ない現状に腹立たしさや不安,焦りといった精神状態を引き起こしてしまう。今回,その状態にある水泳肩の一症例に対してGaAlAs半導体レーザー治療を試みた。Visual Analogue Scaleにより鎮痛の急性効果が認められた。現実に痛みが軽減したため落ち着きを取り戻し,治療者への信頼感が生じた。その結果治療への専念と炎症部の安静が得られ,慢性炎症に進行することなくスポーツ完全復帰が獲得できた。
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