2003 年 18 巻 3 号 p. 153-157
従来の角度計を用いた関節可動域測定は,骨指標の触診や基本軸・移動軸の設定など,検者の手間と熟練した測定技術が必要である。本研究は,傾斜角度計を用いて,簡便に関節可動域を測定し,その測定値の妥当性と再現性について検証した。健常男性17名(平均年齢22.3歳),34肢の肘及び膝関節の屈曲角度を従来の角度計と傾斜角度計で測定し,比較検討した。その結果,傾斜角度計の測定値は,角度計で測定したものと高い相関性(r=0.77~0.89)を示し,測定誤差が10度を超えたのは肘関節の2肢のみであった。また,測定値の再現性を示す級内相関係数は,同一検者内及び検者間共に従来の角度計で測定したものより高い値を示した。これらのことから,傾斜角度計を用いた関節可動域測定値の妥当性と再現性が確認され,簡便に行えるこの方法は,患者の自己管理能力の向上や理学及び作業療法学科学生の測定技術の修得過程に応用できる可能性が示唆された。