2006 年 21 巻 1 号 p. 37-41
障害物を見て記憶する仕方の相違が障害物を跨ぐ課題遂行に及ぼす影響について明らかにするために,健常学生25名を対象に,6つの条件下で障害物を視覚的に認知記憶させた後,障害物を跨がせた。静止した場合には,遠い条件よりも近い条件の方が障害物に近い脚の運びをしていた。静止した条件と接近した条件とでは跨いだ後の圧中心軌跡,障害物-足部距離に差はなかったが,15秒後に跨ぐよりも直後に跨ぐ方が有意に障害物に近い脚の運びをし,圧中心軌跡も安定傾向にあった。以上より,障害物からの距離が近いと障害物を自身が跨ぐものとしてよりリアリティーを持って認識でき,記憶から動作に移る時間が短い方が適応的に跨げることが示唆された。