抄録
本研究では,脳卒中患者に対する移乗動作能力の予測因子として,機能障害および移乗動作を構成する各要素的動作に着目し,これらの因子がどのように影響を及ぼしているかについて分析した。脳卒中患者58名を移乗動作遂行能力により自立群,介助群の2群に分類し,機能障害要因および構成要素動作要因別に移乗動作能力の予測に関する判別分析を行った。ステップワイズ法による判別分析の結果,機能障害要因では「腹筋力」,構成要素動作要因では「立ち上がり」,「立位方向転換」,「起き上がり」が最終選択された。このことから,脳卒中片麻痺患者の移乗動作能力の予測には,下肢運動麻痺や認知機能障害よりも,体幹機能を指標とした評価が有用であると考えられた。また,姿勢保持能力よりも,立ち上がりや立位方向転換のような一連の動作を構成する動作能力が移乗動作能力の予測には重要であると考えられた。