2007 年 22 巻 2 号 p. 205-208
今回,高齢者の後方移動の特徴を明らかにすることを目的に,高齢者の後方歩行の特徴およびバランス能力との関連性を検討した。対象は転倒予防教室に参加した健常高齢者11名であった。測定項目は,10 m前方歩行,10 m後方歩行,Functional Reach Test,片脚立位テストとした。前方歩行と後方歩行との差の検定には,対応のあるt検定を使用し,後方歩行とバランス能力との関係をPearsonの相関係数を用いて分析した。結果,高齢者における後方歩行は,前方歩行に比べて,歩幅の減少(p<0.001),歩行速度の低下(p<0.001),歩行比の低下(p<0.001)が認められ,バランス能力との関係は低かった。以上のことから,高齢者の後方歩行は歩幅を減少させることで歩行速度や歩行比を調整することが明らかとなり,後方へのバランス移動性を捉えることができる可能性が示唆された。