2022 年 37 巻 4 号 p. 427-432
〔目的〕脳卒中片麻痺患者の歩行開始時の体幹運動特性について検証した.〔対象と方法〕対象は健常高齢者10名と脳卒中片麻痺患者30名とした.重心動揺計,表面筋電計,加速度計を用い,歩行開始時の体幹運動を計測した.筋電図は左右の中殿筋と脊柱起立筋の4筋を導出筋とし,加速度は頸部(C7),腰部(L3),骨盤(S1)に貼付し,測定した.〔結果〕脳卒中片麻痺患者の筋活動潜時は,麻痺側先行ステップ時の麻痺側中殿筋,非麻痺側先行ステップ時の麻痺側脊柱起立筋が非麻痺側より遅延していた.加速度はC7からL3を引いた差の値(dCL)の比較において,健常高齢者と脳卒中片麻痺患者の麻痺側先行ステップで立脚側方向へdCLが変化していたのに対して,非麻痺側先行ステップで遊脚側方向へ変化がみられた.〔結語〕脳卒中片麻痺患者の歩行開始において,先行肢別に体幹が傾斜する代償制御と動き出しが遅延する遅延制御の異なるパターンの運動戦略を呈した.