理学療法科学
Online ISSN : 2434-2807
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37 巻, 4 号
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原 著
  • ─入院前のフレイルが与える影響─
    三本木 光, 藤田 博曉, 山本 満
    2022 年 37 巻 4 号 p. 363-368
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕心臓外科術後患者における入院1ヵ月前のフレイルと退院時の運動耐容能との関連を調査し,臨床介入方法の一助にすることである.〔対象と方法〕待機的に開胸術を施行された60歳以上の心臓外科術後患者32名を対象とした.入院1ヵ月前のフレイル状態は,術後に基本チェックリスト(KCL)を用いて調査した.KCL 8点をカットオフにフレイル群(11名),非フレイル群(21名)の2群に分け,退院時の6分間歩行距離(6MD),4 m歩行速度,握力,膝伸展筋力を比較した.〔結果〕入院前のフレイルの該当率は34.4%であった.フレイル群において,6MDや4 m歩行速度,握力,膝伸展筋力は有意に低値であった.重回帰分析の結果,KCLが6MDに影響する要因であった.〔結語〕心臓外科術後患者の退院時運動耐容能は,入院前のフレイルの影響を受けることが示唆された.

  • 位髙 駿夫, 藤平 杏子, 大川 康隆, 宮崎 誠司, 塚田 真希
    2022 年 37 巻 4 号 p. 369-373
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕本研究は,女性柔道選手の月経期間別の月経随伴症状と生活習慣との関連性について明らかにすることを目的とした.〔対象と方法〕18歳から21歳までの女性柔道選手169名を対象とし,プロフィール,柔道実施状況,生活習慣で構成された質問紙と月経随伴症状に関する質問紙(MDQ)調査を実施した.〔結果〕月経前および月経中のMDQの総得点と平日の睡眠時間との間に負の相関が認められた.平日および休日の睡眠時間が短い女性柔道選手は月経随伴症状の得点が高値を示す関係性が明らかとなった.〔結語〕女性柔道選手において月経前や月経中は月経随伴症状が悪化することから,睡眠時間をはじめとした生活習慣への注意が必要である.

  • 鈴木 幸宏, 堀本 ゆかり
    2022 年 37 巻 4 号 p. 375-382
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕リハビリテーション実施施設で行われている新人教育の実施状況に関するアンケート調査を行い,新人教育の実態と課題を明らかにすることとした.〔対象と方法〕東京都の理学療法士が5名以上在籍するリハビリテーション実施施設300施設にアンケートを郵送し,回答のあった58施設を対象とした.新人教育の達成度が7以上の施設(高達成群)と6以下の施設(低達成群)の2群に分け,また勤務領域を4群に分け比較した.〔結果〕高達成群は,スタッフ人数,教育部門の設置,指導者全員が新人教育プログラムを修了状況,評価表使用に関して有意に高値を示した.〔結語〕施設によって環境が異なるため,施設の環境に合わせた新人教育方法の検討が必要である.

  • ─ラットでの研究結果から─
    西田 亮一, 後藤 淳, 嘉摩尻 伸, 藤田 匠, 寺山 奨悟, 白波瀬 未萌, 岡田 圭祐, 今北 英高
    2022 年 37 巻 4 号 p. 383-386
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕ラットの筋再生に対する加齢の影響を調べること.〔対象と方法〕Wistar系雄性ラットを週齢の違いにより,10週齢群,24週齢群,95週齢群の3群に分類し,各群でカルディオトキシンをヒラメ筋に投与し,筋損傷モデルを作製した.カルディオトキシン投与後1日,2日,4日,7日,14日,28日にヒラメ筋の生理学的分析および組織学的分析を行い,検討した.〔結果〕損傷骨格筋断面積は全群ともに経時的に増大したが,若齢であるほど早期に観察された.筋衛星細胞陽性細胞を示す転写因子であるPax7は,カルディオトキシン投与後4日目において10週齢群および24週齢群はピークを迎えたが,95週齢群は遅延した.〔結語〕本研究において,加齢により骨格筋肥大と筋衛星細胞発現数は低下することが示唆された.

  • ─健常成人での検討─
    福島 卓, 松浦 晃宏, 苅田 哲也, 森 大志
    2022 年 37 巻 4 号 p. 387-391
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕重心移動練習課題中の前庭機能を抑制することを目的とした経頭蓋直流電気刺激(tDCS)が重心移動学習を促進させるかを検討した.〔対象と方法〕健常成人10名を対象とし,重心移動練習課題中に右側乳様突起部へ3分間陰極通電するtDCS条件と課題開始後30秒間通電するsham刺激条件を比較した.練習課題前後に,前後・左右方向の足圧中心(CoP)変位と下肢荷重量を計測した.同時に下腿の表面筋電図を記録した.〔結果〕tDCS条件では,練習実施後にCoPが右側へ有意に変位し,右下肢荷重量が増大した.〔結語〕前庭tDCSは立位重心移動誘導を促進させるツールとなり得る可能性がある.

  • 鈴木 学
    2022 年 37 巻 4 号 p. 393-398
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕学生の実習施設内行動レベルと性格との関連があるかどうか,検討した.〔対象と方法〕A大学理学療法学科4年生78名に対し,8週間の臨床実習後にK-T性格検査による5タイプの性格要素と,独自に作成した自己評価による実習施設内行動レベルとの関係を検討した.〔結果〕「自己抑制型」は,行動レベル37項目中のうち24項目で有意な負の相関があり,最も関係が強く,最高得点の性格となると他よりも低い行動レベルであった.〔結語〕内向的なタイプでは,教員と実習指導者が情報共有して指導に留意する必要があることが示唆された.

  • 菅沼 惇一, 千鳥 司浩, 池田 由美
    2022 年 37 巻 4 号 p. 399-404
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕本研究の目的は,足部感覚トレーニングが健常若年者の足底の体性感覚に与える影響を明らかにすることである.〔対象と方法〕対象は健常若年者26名とした.介入は,閉眼の座位姿勢にて多軸不安定板上に裸足で足底部を乗せ,前後左右の1ヵ所にランダムに重錘を置き,どこに重錘があるか回答を求めた.介入前後で足底(母趾,小指球,踵)の触圧覚および二点識別覚を計測し比較した.〔結果〕介入後は,触圧覚は変化を認めなかったが,足底(母趾,小指球,踵)の二点識別覚の向上が認められた.〔結語〕本研究で考案した足部感覚トレーニングを実施することで,即時的に足底の感覚機能が向上することが示唆された.

  • 石川 響, 矢倉 千昭
    2022 年 37 巻 4 号 p. 405-411
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕本研究の目的は,漁師における筋骨格系症状の発生状況と関連因子について調査することであった.〔対象と方法〕43名の漁師を対象に,過去12ヵ月での筋骨格系症状の発生の有無および個人因子(年代,性別,身長,体重,喫煙の有無,就業年数および作業時間),作業因子(仕事で行う7項目の動作の自覚的負荷強度および動作時間),心理的因子(人間関係のストレス,仕事の満足度および上司の支援)について質問紙調査を行った.〔結果〕筋骨格系症状の発生は腰(83.7%),手/手首(60.5%),肩(53.5%),の順に多かった.手/手首の筋骨格系症状には,年代,就業年数,作業時間,立つ動作が関連し,肩の症状には人間関係のストレスが関連していた.〔結語〕本研究の結果より,漁師の筋骨格系症状は腰部と上半身に発生が多く,年代,立つ動作の身体的な負荷,作業時間および人間関係が漁師の筋骨格系症状の発生に関連していることが示唆された.

  • ─胸椎の過度後弯に着目して─
    小山 浩司, 古島 弘三, 菅野 好規, 新津 あずさ, 小太刀 友夏, 新納 宗輔, 上野 真由美, 高橋 英司, 足立 和隆
    2022 年 37 巻 4 号 p. 413-418
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕小学生の胸椎過度後弯の割合とその特徴を明らかにした.〔対象と方法〕小学生83名において,スパイナルマウスを用いて立位での胸椎後弯,腰椎前弯,仙骨傾斜の各角度を測定した.胸椎後弯角40°を基準として,これより大きい過度後弯群と小さい正常後弯群に分け,比較検討した.〔結果〕小学生の約30%に胸椎の過度後弯がみられた.過度後弯群は,正常後弯群に対し,胸椎後弯角(上位胸椎,下位胸椎),腰椎前弯角において有意に大きな弯曲を示し,過度後弯群では上位胸椎が下位胸椎に比べ有意に弯曲度が大きかった.また,両群ともに腰椎前弯角と仙骨傾斜角に強い負の相関関係を認めた.〔結語〕胸椎の過度後弯を呈する小学生の割合は約30%であり,その特徴として上位胸椎の弯曲が大きい可能性が示唆された.

  • 石野 麻衣子, 堀本 ゆかり
    2022 年 37 巻 4 号 p. 419-425
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕理学療法士のメンタリング行動特性に関する行動指標を作成し,信頼性と妥当性を検証すること.〔対象と方法〕臨床業務に従事し,かつ職員指導経験がある経験年数5年以上の理学療法士を対象に,web形式の無記名アンケートを実施した.探索的因子分析により尺度の信頼性,因子的妥当性を検討後,得られた因子モデルを基に確認的因子分析を行った.〔結果〕有効回答401件を分析した結果,「効果的な教育支援」,「精神的支援」,「専門職のモラル」,「モデル機能」,「キャリア支援」の5因子が抽出され,一定の信頼性,妥当性が確認された.〔結語〕理学療法士の育成過程で,心理的・社会的側面への支援とメンター育成の必要性が示唆された.

  • 大沼 亮, 星 文彦, 松田 雅弘, 酒井 朋子, 神野 哲也
    2022 年 37 巻 4 号 p. 427-432
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕脳卒中片麻痺患者の歩行開始時の体幹運動特性について検証した.〔対象と方法〕対象は健常高齢者10名と脳卒中片麻痺患者30名とした.重心動揺計,表面筋電計,加速度計を用い,歩行開始時の体幹運動を計測した.筋電図は左右の中殿筋と脊柱起立筋の4筋を導出筋とし,加速度は頸部(C7),腰部(L3),骨盤(S1)に貼付し,測定した.〔結果〕脳卒中片麻痺患者の筋活動潜時は,麻痺側先行ステップ時の麻痺側中殿筋,非麻痺側先行ステップ時の麻痺側脊柱起立筋が非麻痺側より遅延していた.加速度はC7からL3を引いた差の値(dCL)の比較において,健常高齢者と脳卒中片麻痺患者の麻痺側先行ステップで立脚側方向へdCLが変化していたのに対して,非麻痺側先行ステップで遊脚側方向へ変化がみられた.〔結語〕脳卒中片麻痺患者の歩行開始において,先行肢別に体幹が傾斜する代償制御と動き出しが遅延する遅延制御の異なるパターンの運動戦略を呈した.

  • 竹田 雄世, 関根 紀子
    2022 年 37 巻 4 号 p. 433-439
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕前脛骨筋に対して異なる強度の圧迫法を施行し,圧迫強度が筋硬度へ及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.〔対象と方法〕健常成人男性21名(42脚)の前脛骨筋に対し,膝蓋骨下縁から脛骨粗面方向に膝蓋骨下縁~外果間距離の25%離れた位置を圧迫点とし,強度2,4,6,8 kg(830,1440,1990,2230 g/cm2 相当)で60秒間圧迫した.圧迫点および圧迫点から3 cm離れた点で,圧迫前,直後,5分後の筋硬度を測定した.〔結果〕両測定点の圧迫直後と5分後の筋硬度は,すべての圧迫強度で圧迫前より有意に低下したが,その変化量に強度による差はみられなかった.〔結語〕圧迫強度2 kgで筋硬度を十分低下させることが示唆された.

  • 吉村 洋輔, 大坂 裕, 伊藤 智崇
    2022 年 37 巻 4 号 p. 441-445
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕ノルディック・ウォーキング(NW)とT字杖での歩行が歩容や姿勢に及ぼす影響を明らかにする事を目的とした.〔対象と方法〕対象は,NWの経験がない健常若年成人20名とした.NW,T字杖での歩行,杖なしでの歩行の3つの条件での歩行をトレッドミル上で実施した.歩行の速度は快適歩行速度とした.モーションキャプチャシステムを使用し,身体各部の角度(頸部・体幹・股関節・膝関節)を算出し比較を行った.〔結果〕通常歩行に比べ,T字杖歩行で歩行中の頸部最大屈曲が有意に大きな値となった.また,NWでは歩行中の膝最大屈曲が有意に小さい値となった.〔結語〕頸部疾患や膝関節疾患を有する症例に対して,力学的負荷を軽減したいような場合にはNWの方が有効となる可能性を示唆する結果となった.

  • 月田 隼貴, 山田 孝禎, 浦井 龍法, 月田 理江, 野口 雄慶, 山次 俊介
    2022 年 37 巻 4 号 p. 447-452
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/20
    ジャーナル オープンアクセス

    〔目的〕片脚着地動作時の運動学および運動力学的特性と接地衝撃音との関係を明らかにすること.〔対象と方法〕健康な青年男性13名を対象とし,30 cm高の台より片脚で任意(N)および可能な限り静か(Q)に着地させた.両条件下における着地時の鉛直方向床反力,膝関節外反モーメント,膝関節屈曲角度の最高値および着地40 msec後の値,着地開始から完了までの膝・股・足関節の運動範囲,loading rate,および接地衝撃最高音を測定した.〔結果〕N条件ではQ条件より接地衝撃音,鉛直方向床反力,膝関節外反モーメントの最高値およびloading rateは有意に高く,膝関節屈曲最高角度および股・膝・足関節運動範囲は有意に低かった.〔結語〕接地衝撃音と運動学および運動力学的特性に関係がある可能性が示唆された.

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