理学療法科学
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痴呆性老人の認知障害特性と補助環境 ―場所の同定障害に関して―
大橋 美幸
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キーワード: 痴呆, 認知, 環境
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1998 年 13 巻 1 号 p. 17-22

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抄録
本調査の目的は,痴呆性老人の場所の同定障害の要因を分析し,これを補う環境を考えることである.老人保健施設入所者30名(健常群15名,痴呆群15名)に対して,住宅内の写真(台所,浴室,便所,洗面所各3枚)を見せ,場所の名前とそう思う理由を尋ねた.痴呆群は健常群と比べて,多くの写真で「場所の名前」の正答率が低かった.また,痴呆群は健常群と比べて,多くの写真で「そう思う理由」であげた物の数が少なく,あげた物の中に,高い割合で,場所を識別する基準とならない物や誤認した物を含んでいた.痴呆性老人の場所の同定障害の要因の一つとして,場所を同定するための有効な情報に乏しいことが考えられた.場所にある物の配置や形態を調節することで,有効な情報を得やすくし,場所の同定障害を補う可能性が考えられた.
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