理学療法科学
Online ISSN : 2434-2807
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13 巻, 1 号
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  • 小坂 健二, 正岡 太郎, 瀬井 るり, 飯野 文子, 森井 勇
    1998 年 13 巻 1 号 p. 3-6
    発行日: 1998年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    脳血管性痴呆患者20例に対して,皮質覚醒(cortical arousa1)や行動覚醒(behavioral arousal)をひきおこすことが確かめられている足底叩打刺激(sole tapping stimulation)を刺激器具を使って毎日2回,15分間刺激を行った。その結果,2ヵ月後に,改訂長谷川式簡易痴呆スケールでの知能機能の改善,FIMでのADL改善,精神症候重症度評価表での精神症状の改善がそれぞれ統計的に有意にみられた。脳血管性痴呆患者の機能回復のための治療に簡便で好き嫌いなく受け入れられる方法として有用と考えられる。
  • 重心移動域との関連性
    望月 久
    1998 年 13 巻 1 号 p. 7-10
    発行日: 1998年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    脳卒中片麻痺患者のバランス機能の特徴を検討するために,脳卒中片麻痺患者31名を対象に患者の歩行能力別に重心動揺面積および前後・左右方向への重心移動域を測定した。歩行能力は装具使用可,杖使用不可の条件で,屋外独歩レベル,屋内独歩レベル,屋内監視レベル,歩行不能レベルの4段階に分けた。測定は足底内側を平行に12cm離した支持基底面で行なった。重心動揺面積は20秒間立位保持をした時の前後左右の重心動揺の最大値を乗じて求めた。重心移動域は患者に同じ支持基底面で前後左右に随意的に重心移動を行なわせ,その移動幅の最大値を使用した。歩行能力レベル別に重心動揺面積,重心移動域を比較した結果,重心移動域と歩行能力との間に統計的有意性を認めた。特に,歩行不能レベルと屋内監視歩行レベルの間に,麻痺側への重心負荷率の大きな差がみられ,これは歩行可能時期の麻痺側方向への重心移動訓練の重要性を示唆する結果と考えた。
  • 木山 良二, 浜田 博文, 梅本 昭英, 窪田 正大, 山下 眞理, 一松 珠紀, 新納 明子
    1998 年 13 巻 1 号 p. 11-15
    発行日: 1998年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    脳血管障害患者において,発症より6ヶ月以上経過した慢性期の患者,男性60例,女性70例,合計130例を対象に身体,精神,高次脳機能について評価した。そして各々の評価結果とBarthel Index得点を分析し統計的な有意差や相関関係があるかどうかを検討し,ADLに影響を与える因子を調べた。その結果,ADLと相関関係が認められた項目は,年齢,Brunnstrom Stage,健側筋力,深部感覚(位感覚,運動覚),歩行能力,HDS-R,WAIS-R(PIQ,TIQ),KOHS立方体組み合わせテストで,ADLと相関関係が認められなかった項目は,性別.片麻痺側.WAIS-R(VIQ).失語.失認.失行などであった。
  • 大橋 美幸
    1998 年 13 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 1998年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    本調査の目的は,痴呆性老人の場所の同定障害の要因を分析し,これを補う環境を考えることである.老人保健施設入所者30名(健常群15名,痴呆群15名)に対して,住宅内の写真(台所,浴室,便所,洗面所各3枚)を見せ,場所の名前とそう思う理由を尋ねた.痴呆群は健常群と比べて,多くの写真で「場所の名前」の正答率が低かった.また,痴呆群は健常群と比べて,多くの写真で「そう思う理由」であげた物の数が少なく,あげた物の中に,高い割合で,場所を識別する基準とならない物や誤認した物を含んでいた.痴呆性老人の場所の同定障害の要因の一つとして,場所を同定するための有効な情報に乏しいことが考えられた.場所にある物の配置や形態を調節することで,有効な情報を得やすくし,場所の同定障害を補う可能性が考えられた.
  • ―部位・収縮別周波数特性の検討―
    加藤 浩, 藤野 英次郎, 上島 隆秀, 城石 晴子, 時枝 美貴, 高杉 紳一郎, 林 和生
    1998 年 13 巻 1 号 p. 23-27
    発行日: 1998年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,筋の質的評価として注目されている表面筋電図周波数解析(以下,周波数解析)が測定法の違い(電極貼付部位・収縮様式の違い)によりどの程度影響を受けるのか明確にすることである。対象は健常男性13名(23.5±1.3歳)とした。電極貼付部位は,中殿筋筋腹部・腱部そして大腿筋膜張筋筋腹部の3カ所とした。収縮様式は最大等尺性収縮(以下,ISOME)・最大求心性収縮(以下,CON)・最大遠:心性収縮(以下,ECC)の3パターンとした。その結果,筋力はECC>ISOME・CONの順で有意であった。貼付部位による周波数特性は見られなかった。また,測定手技としてCON・ECCの動的測定では,個体差(測定上のノイズ)の影響が大きく,ISOMEによる静的測定が有効な手段である。
  • 池田 由美, 竹井 仁, 富田 浩, 岩崎 健次, 池田 誠, 柳澤 健
    1998 年 13 巻 1 号 p. 29-32
    発行日: 1998年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    3種類(50W,100W,150W)の負荷強度で下肢自転車エルゴメータによる6分間の一段階運動負荷試験を行い,筋電図積分値(IEMG)と周波数パワースペクトル中央値(MdPF)の変化から外側広筋の筋疲労と運動負荷強度との関係を健常男性8名で検討した。IEMGとMdPFは,50Wおよび100W負荷強度では1~6分の間では変化が見られなかった。しかし,150Wでは初めの3分間は8例とも変化がないが,4分目でIEMGの上昇とMdPFの低周波帯域への移行が5例で見られた。100Wから150W間の負荷強度で外側広筋の疲労が生じていることが示唆された。
  • 間瀬 教史, 上村 洋充, 谷崎 忍, 小室 透, 居村 茂幸, 藤原 誠
    1998 年 13 巻 1 号 p. 33-38
    発行日: 1998年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    我々は,ギランーバレ症候群患者に見られる高い筋疲労性が,筋力の回復にともないどのように変化するのかに興味を持った。今回対象としたのは,本症候群患者6例で,筋力回復中の二つの異なる時期に,1分間最大等尺性収縮中の筋力および表面筋電図上の変化を観察した。発症平均2か月後では,正常人に比べギランーバレ症候群患者は,筋収縮中の筋力,IEMGが有意に低値を示し,特に発症50日以内の患者で著しかった。しかし,発症平均3か月後では,筋収縮中の筋力およびIEMGの変動パターンは,正常人との問に差は見られなかった。これらの結果から,ギランーバレ症候群初期に見られる高い筋疲労性は,筋力の回復とともに改善し,発症3か月という比較的短期間に,正常人と同程度にまで改善することがわかった。
  • 久家 直巳, 佐藤 徳太郎
    1998 年 13 巻 1 号 p. 39-43
    発行日: 1998年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    健常成人8名を対象に経口水負荷時と運動負荷時における尿中過酸化水素排泄量の変化を測定した。測定には,50倍希釈尿と1-14C-α-ketoglutaric acidを反応させ,発生する14CO2の放射活性を測定する方法を用いた。水負荷量は1時間毎に50~300m1,平均141.7ml/hとした。運動負荷は水負荷に加え,予測最大心拍数の80%と40%の強度で30分間自転車エルゴメータを駆動した。結果は以下の通りであった。1)尿量は,安静群では初期値より2,3時問目まで増加したのに対し,80%負荷では,尿量の増加はわずかであった。2)尿中H2O2排泄量は,安静群ではわずかに上昇したが,80%負荷では運動直後に減少し,負荷後1,2時問目では安静群よりも有意に低い値を示した。今回の研究により,尿中H2O2排泄量の定量性が確認され,水利尿,尿細管におけるNa+再吸収などが尿中H2O2排泄に影響を及ぼしていることが示唆された。
  • 庄本 康治, 中本 隆幸, 西本 東彦, 幸田 利敬
    1998 年 13 巻 1 号 p. 45-49
    発行日: 1998年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    自律訓練法(ATと略す)は,末梢皮膚温の上昇,末梢血流量の増大,血圧の低下を起こすと考えられている。末梢循環の改善が起こるなら,術後や反射性交感神経性ジストロフィーの患者で,損傷部の循環改善と治癒促進を起こす可能性があるが理学療法領域での研究はない。そこで,ATが末梢循環に与える影響を確認し,臨床研究の価値について考察することを本研究の目的とした。健常成人23名にATを実施し,合計3回,AT前後で表面皮膚温度,血流速度,血圧,脈拍を測定した。最終測定時に表面皮膚温度が有意に上昇し,血流速度は上昇,血圧は下降傾向を示した。これらはATの専門家による結果と類似していた。今後は上記疾患の患者を対象に臨床研究を実施する必要があると考察した。
  • 阪井 康友, 上田 眞太郎, 永田 博司, 大越 教夫
    1998 年 13 巻 1 号 p. 51-57
    発行日: 1998年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    マウス腓腹筋の腱束および腱膜部における筋腱移行部の微細構造について検索を行った。腱東部の筋原線維と膠原線維の間には指状陥入構造による連結の形態を特徴とした。膠原線維側には基底膜を,筋原線維側には筋形質膜を認め,筋節の末端(Z線)のアクチンフィラメントが筋形質膜に接合していた。腱膜部では突起状の腱束が腱膜より鋭角に出現し,腱東部と同様の連結構造を示した。筋線維は筋の長軸方向に対し多様な角度で斜走し,腱束の接合がみられ,腓腹筋は抗重力筋として筋の収縮変位に乏しいが,最大張力発生に有利な筋デザインであることを示唆した。
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