日本臨床外科医学会雑誌
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後腹膜原発悪性神経鞘腫の1例
笠原 洋, 山田 幸和, 中尾 稀一, 田中 茂, 浅川 隆, 園部 鳴海, 須藤 峻章, 久山 健
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1984 年 45 巻 2 号 p. 181-186

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抄録
後腹膜腫瘍のうちで神経原性腫瘍の頻度は少なく,そのなかでも神経鞘腫が後腹膜に原発することは極めて稀と思われる.左上腹部腫瘍を主訴とした79歳の男性で,膵嚢胞腺癌を疑って開腹,多数の嚢胞を有する腫瘤で胃大弯側に浸潤しており,脾,膵尾,胃の一部とともに合併切除した.腫瘤最長径は15cm,重量960gで,後腹膜原発の悪性神経鞘腫と診断された.術後1年余の現在,患者は再発の徴なく元気で過している.
本邦報告例に自験例を加えた,後腹膜原発神経鞘腫117例についてみると,良性86例(男女比43:41,平均年齢,男45.7歳,女40.0歳),悪性31例(男女比21:10,平均年齢,男52.8歳,女43.8歳)であった.良性,悪性間には男女の平均年齢,臨床症状発現から神経鞘腫と確診されるまでの期間については有意の差が無いが,腫瘍の最長径と重量には有意の差がみられた.
特定の腫瘍を除くと,術前に後腹膜腫瘍の種類の判別は困難である.しかし,後腹膜腫瘍との診断は腹部超音波検査,腹部CT,腹部血管造影などの駆使により良好であり,神経鞘腫についても術前診断に言及の85例中64例(75.3%)と高い後腹膜腫瘍の確認率であった.
後腹膜原発神経鞘腫は良,悪性を問わず切除後の再発傾向が強く,また化学療法や放射線療法はほぼ無効とされる.従って完全な摘出が要求され,他臓器の合併切除も止むを得ないと思われる.再発をみた場合でも,腫瘍の発育傾向が比較的緩徐な例もみられることから,再切除や減量手術にも意義はあると思われる.腫瘤触知以外にさしたる臨床症状もなく経過の例が多くみられたが,後腹膜腫瘍の診断がつけぱ早期に手術を施行し,神経鞘腫と判明すれば,完全摘出,長期経過観察が必要のことを強調したい.
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© 日本臨床外科学会
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