1999 年 60 巻 9 号 p. 2334-2337
症例は70歳,女性.右頸部腫瘤にて近医受診し,甲状腺腫瘍を指摘され,当科を紹介された.右頸部に3cm大の弾性やや軟で可動性良好な腫瘤を認め, CTにて甲状腺右葉に径4×3cmの石灰化を伴う腫瘤陰影を認めた.術中に甲状腺右葉裏面の傍気管に表面平滑で充実性の4×2cmの腫瘤を認め,リンパ節転移を疑い,甲状腺右葉とともにこれを摘出した.病理組織で,甲状腺腫瘍は濾胞癌,傍気管の腫瘤は神経鞘腫と診断された.甲状腺腫瘍と頸部神経鞘腫との合併は,本邦ではこれまでに6例の報告があるのみで,非常に稀な症例であった.