日本臨床外科学会雑誌
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腹壁膿瘍にて発症した鼠径ヘルニア虫垂嵌頓の1例
小出 紀正水野 伸一浅野 英一高橋 泰夫下地 英機
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1999 年 60 巻 9 号 p. 2494-2497

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抄録

鼠径ヘルニア内に虫垂が嵌頓することは非常に稀である.今回,鼠径ヘルニア虫垂嵌頓により腹壁膿瘍を形成した1例を経験したので報告する.
症例は,71歳女性.主訴は右下腹部腫脹. 1996年5月11日右下腹部を打撲し, 5月19日右鼠径部内側より膿の流出を認め来院した.腹部CTで,嵌頓鼠径ヘルニアによる腹壁膿瘍を疑い,緊急手術を施行した.腹壁膿瘍を切開洗浄し,創を被覆した後,下腹部正中切開で開腹した.虫垂先端が鼠径窩に嵌入し,腹腔側に虫垂を整復すると腹壁膿瘍との交通を認めた.虫垂切除術,ヘルニア根治術,腹腔ドレナージ術を施行し,閉腹後,腹壁膿瘍ドレナージ術を施行し手術を終了した.
鼠径ヘルニア内虫垂嵌頓による腹壁膿瘍合併症は報告がなく,術前診断に難渋した.イレウス症状のない嵌頓鼠径ヘルニアでは,内容が虫垂である可能性も念頭におく必要があると思われた.

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