日本臨床外科学会雑誌
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直腸癌骨盤内臓全摘術後に生じた脾炎症性偽腫瘍の1例
谷口 史洋松田 哲朗津田 知宏相川 一郎
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キーワード: 脾腫瘍, 炎症性偽腫瘍
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2003 年 64 巻 4 号 p. 974-980

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抄録

症例は54歳,男性.進行直腸癌にて骨盤内臓全摘術を施行した.術後経過観察中に,血清CEA値の再上昇を認め, CT検査で脾に2 cmの低吸収域を伴う腫瘍陰影が出現したため,精査目的で入院となった.腹部MRIでT1強調画像(T1WI)上,脾実質と等信号で内部構造不均一な腫瘤像を認め, T2強調画像(T2WI)では低信号を示した.血管造影では異常所見は認めなかった.脾原発の良性腫瘍も考えられたが,直腸癌の孤立性脾転移の可能性も否定できないため脾摘術を施行した.腫瘍は20×18mmの大きさで,被膜形成はなく境界明瞭であった.割面は赤褐色充実性で,内部には星忙状の白色結節を認めた.病理組織学的所見にて病変部は線維芽細胞の増殖とリンパ球,形質細胞の浸潤からなっていた.以上より,炎症性偽腫瘍と診断した.本症は術前診断が困難であり,脾摘せざるをえないことが多い.本邦42例を集計し,文献的考察を加えて報告する.

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