2023 年 29 巻 p. 551-556
96の1級水系を対象に,地域気候モデルの出力を用いて,年流域平均降水量が非超過確率1/10以下となる少雨の発生頻度を計算した.地域気候モデルの出力は,気候変動適応技術社会実装プログラム(SI-CAT)によって,アンサンブル気候予測データ(d4PDF)を水平解像度5kmメッシュに力学的ダウンスケーリングされたデータをバイアス補正した上で用いた.その結果,96の1級水系の年流域平均降水量が非超過確率1/10となる少雨の発生頻度は,2°C上昇実験では過去実験の0.15倍~3.94倍となり,平均値は1.47倍,標準偏差は0.72倍となった.4°C上昇実験では過去実験の0.21倍~5.29倍となり,平均値は1.93倍,標準偏差は1.00倍となるなど,96の1級水系における気候変動による非超過確率1/10の少雨年の発生頻度は,多くの水系で増加傾向となることが確認されたものと考える.その結果,気候変動の影響により,これまでに開発された水利流量・維持流量が多くの水系で減少傾向となる可能性があると推測する.そのため,将来の水資源に関する中長期的な計画では,気候変動の影響を考慮することが望ましいと提起する.