2023 年 29 巻 p. 79-84
本研究では,近年,洪水予測計算に利用されるニューラルネットワーク(ANN)について,転移学習を用いて,予測精度の向上に資する,網羅的な河川洪水の水位変化のパターン(特徴量)を学習した事前学習モデルを構築し,事前学習モデルを用いて,特定の洪水イベントについて予測精度の改善を試みた.方法について,まず,九州地方の主要河川で収集される洪水イベントの観測値を利用して,事前学習モデルを構築した.次に,複数の対象地点について,期間最大洪水イベント(TOP1)を除く洪水イベントの観測データでモデルを再学習し,TOP1の水位変化を予測した.予測結果について,再学習のための観測データが比較的多い場合には,再学習回数が多くなるほど収束し,事前学習モデルを利用しない従来型ANNと比べて,同程度か,多少の予測精度の改善が見られた.他方,再学習のための観測データが少ない場合に,事前学習モデルをそのまま利用すれば,大幅な予測精度の改善が見られた.加えて,複数の急激な水位変化が見られる洪水イベントの予測では,ピーク水位時の時間ズレが顕著になった.